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十二国記390

时间: 2020-08-31    进入日语论坛
核心提示:「やっぱりお前だったんだな」 陽子は言って、宿の客房《きゃくま》に入る。堂《ひろま》に座った澄ました顔をねめつけた。 相
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「……やっぱりお前だったんだな」
 陽子は言って、宿の客房《きゃくま》に入る。堂《ひろま》に座った澄ました顔をねめつけた。
 相手は少し不審そうに目を見開いて首をかたむける。すぐに丁寧《ていねい》に頭を下げた。巻いて垂《た》らした布が肩先から前に落ちる。
「お呼びたてして申しわけありません」
 確かに身なりは良い。いつもに比べれば、これでも質素なくらいだが。まさか官服で出てくるわけにもいかないだろうから、当たり前なのだが。
「とんだお呼びたての仕方だぞ、あれは」
「——は?」
 案内してきた宿の者が、意味ありげな視線を投げて出ていく。言われもしないのに堂の扉を閉めていったので、陽子は深く溜め息をついた。
「もう、いい」
 溜め息交じりに言って、陽子は椅子《いす》に腰をおろす。その足元からくつくつと笑い声が聞こえた。
「班渠《はんきょ》だな。——班渠を遣《つか》わしてくれればよかったのに」
「里家《りけ》がどんなところだか、見てみたかったものですから。——いけませんでしたか?」
「いいけどね。——それより、どうした。景麒《けいき》がわざわざ来るとは」
 景麒は膝《ひざ》の上の文箱《ふばこ》から紙の束を取り出して卓の上にそろえた。
「御璽《ぎょじ》をお持ちですか」
「なんだ、そういうことか」
 陽子は苦笑しながら、首を振る。
「それなら言ってくれなきゃ。——持ってきてない」
「では、書面を預けますから、明日、班渠にでも持たせてください」
「分かった」
 陽子は書面を文箱ごと受け取る。全てを景顔に任せたといっても、高官に下す政令には王の御名御璽がいる。ざっと紙面を繰り、目を通していく。——なにしろ陽子は漢文が読めないので、本当に眺めるだけでしかない。内容を理解するためには景麒に読んでもらわなくてはならなかった。
「里家はいかがです?」
「——うん? いいところだ。遠甫もいい方だし、里家の子供もいい子だから」
「そのようでしたね。よろしゅうございました」
「気になることもないわけじゃないが……」
 陽子がつぶやくと、景麒はそれですが、と声を低めた。
「お尋ねのあった昇紘《しょうこう》のことですが。とりあえず官籍をあたって官に訊《き》いてみましたが、和州止《わしゅうし》水郷《すいごう》、郷長。悪評の高い人物のようですね」
「和州はくせがあるな。州侯《しゅうこう》の呀峰《がほう》といい、昇紘といい」
「分を越えたことも多いので、処罰しようと諸官は躍起《やっき》ですが。なにしろ呀峰の保護があって事あるごとに呀峰が庇《かば》うので、それができません」
「遠甫は呀峰を尾のない豺虎《けだもの》だと呼んでいた」
「そのとおりだと」
「幸い、止水は近い。郷長の昇紘については少し様子を見てみる。一度和州の首都にも行ってみるかな……」
「あまり危険なことは——」
「しない。充分気をつける」
 景麒はちらりと陽子を見た。
「本当ですか? ——生臭《なまぐさ》いにおいがいたしますよ」
「——え?」
 陽子はあわてて袍《うわぎ》を嗅《か》いでみる。
「血の臭いでしょう。……主上《しゅじょう》がなにかなさったわけではなさそうですが」
「……ああ。——事故に行き合っただけだ。昨日のことなのに、まだ臭うか?」
「怨詛《うらみ》ある血というわけではないようですから、ごく薄くではございますが。本当に気をつけていただかなくては困ります」
 怨詛ある血か、と陽子は苦笑した。偽王《ぎおう》と戦っている間、よく景麒にそう言われたことを思い出した。たとえどんな大義があろうとも、人を殺し、あるいは殺すように命じれば、流された血は怨詛を含んで陽子にまとわりつく。麒麟《きりん》は実際、血に弱いが、怨詛の気もまた麒麟を苦しめる。
「……気をつける」
 景麒は——麒麟は生臭なものが食べられない。受けつけないわけではないが、脂《あぶら》で煎《い》ったもの、脂で揚《あ》げたものでさえ身体に障《さわ》る。蓬莱《ほうらい》に流された麒麟が長く生きることができないのは、そのせいだろうと、延麒六太《えんきろくた》などは言う。王のいない麒麟の寿命は三十年前後と短い。蓬莱に流された麒麟のそれはさらにその三分の一程度らしかった。
 ——そういう生き物なのだ、麒麟たちは。
「本当に、気をつけるから……」
「そのようにお願いします」
「——堯天《ぎょうてん》の様子はどうだ?」
 強《し》いて明るく陽子が問うと、景麒は渋《しぶ》い顔をした。
「やはり主上がおられませんと」
 景麒は軽く息を吐く。
 相変わらず権を争う官は朝廷を二分する。その筆頭、もと冢宰《ちょうさい》の靖共《せいきょう》が実権を失い、反対派の首長である大宰《たいさい》が死んだといえど、その状況には変わりがない。なまじ権力がないだけ、彼らの興味は統治よりも勢力を争うことに向いてしまった感があった。
 まことしやかにある者は言う。王は弑逆《しいぎゃく》に怖《お》じ気《け》づき、蓬莱に帰ったと。ある者は雁《えん》に保護を願っているのだと言い、またある者は実は内宮《ないぐう》の奥深くに隠れていると言い、果ては逃げ出した元|麦州侯浩瀚《ばくしゅうこうこうかん》が王を攫《さら》ったのではと言う者もいる始末。いずれにしても共通しているのは、玉座《ぎょくざ》を放り出した王への非難と、二度と王が玉座に戻ってくることはないのではないか、と漠然《ばくぜん》と疑っていることだった。
 景麒がそう言えば、陽子もまた息を吐く。
「そうか……」
「朝廷が自分の思うままにならないのに業《ごう》を煮《に》やし、延王《えんおう》に請《こ》うて雁国より官僚を招く気だと言う者も」
 なに、と陽子は目を見開く。軽く唇を噛《か》んで、すぐに苦く笑った。
「……なるほど、わたしは延王の援助がなければ、なにひとつできないと思われてるわけだ……」
 それは事実だが、依存していると思われるのは悔《くや》しい。
「まさかとは思いますが。そのようなことはお考えではありませんね?」
 ぴくりと肩を震わせて、陽子は景麒を見る。
「……なぜ、わざわざそれを訊《き》く?」
 その眸《ひとみ》の翠《みどり》に勁《つよ》い色が浮かんだ。
「それは、確認する必要があることなのか?」
 勘気《かんき》を知って景麒は思わず目を逸《そ》らす。妖魔《ようま》の視線でさえ受けとめられるはずが、主《あるじ》の視線を受けとめることができなかった。
「景麒だけは、わたしを信じなくてはいけない」
「……申しわけありません」
「わたしを信じない第一の者は、わたしなんだから。誰が疑わなくてもわたしだけは、わたしの王たるべき資質を疑っている。猜疑《さいぎ》が過ぎて道を失った王だってあっただろう。——だから、たとえ世界じゅうの誰もがわたしを疑っても、お前だけはわたしを信じていなければならない」
 はい、とうなずいた下僕《しもべ》を見やって、陽子は手の中の書面を広げた。
「景麒は急いで戻らなければならないのか?」
「あまり急いで戻ってはいろいろと障《さわ》りがあるでしょう。なにしろわたしは雁へ行ったことになっておりますので」
 陽子はくすりと笑う。
「なるほどな。じゃあ、一度、景麒も拓峰へ行ってみないか?」
「拓峰というと、止水郷の」
 うん、と陽子はうなずく。
「和州の首都——なんと言ったかな」
「明郭《めいかく》、ですか?」
「うん。明郭へ行ってみたいと思ってた。明郭へ行って拓峰をのぞく。和州の状況を知りたいんだ。なんだったら、道案内をしないか?」
「ですが——」
 景麒が言い淀《よど》むと、陽子はその鮮《あざ》やかな色の目を上げる。
「景麒にも見ておいてもらいたい。王宮からは決して見えない慶《けい》の姿を」
「——はい」
「じゃあ、これを片づけてしまおう。——悪いが読んでもらえるか?」
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