日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

十二国記397

时间: 2020-08-31    进入日语论坛
核心提示: 宿の前には人がたむろしていた。鈴が虎嘯たちと共に戻ると、人垣の中から灯火を挙《かか》げた夕暉が駆け寄ってくる。「おねえ
(单词翻译:双击或拖选)
 宿の前には人がたむろしていた。鈴が虎嘯たちと共に戻ると、人垣の中から灯火を挙《かか》げた夕暉が駆け寄ってくる。
「——おねえさん、……よかった」
 同じようによかった、という声が人垣に満ちて、鈴はうつむく。虎嘯がその肩をもういちど叩いた。
「みんな、すまなかったな。客人は連れて戻った」
 集まった人々が安堵《あんど》するようなどよめきをあげて、ひとりふたりと去っていく。去り際に鈴を軽く叩く手がいくつもあった。
「無事でよかった」
「早まるんじゃねえぞ」
「ひやひやしたぜ、まったく」
 鈴の短慮が虎嘯《こしょう》ら兄弟に迷惑をかける。それを責めているわけではなさそうな声に、鈴はひどく困惑して三々五々去っていく人々を見送った。
 さあ、と虎嘯が促《うなが》し、鈴は宿の飯堂《しょくどう》に押しこまれる。男の一人が三騅《さんすい》を裏のほうへ引いていった。
 中には数人の男がいて、さらに十人ばかりの男たちが、鈴と一緒に飯堂に入ってきた。椅子《いす》のひとつに座らされ、厨房《だいどころ》に駆けこんだ老人が鈴の前に暖かな湯気をあげた湯呑《ゆの》みを持ってきた。気がつくと身体が芯《しん》まで冷えて歯が鳴っている。鈴は両手で湯呑みをくるんでかじかんだ手を温めた。
 なあ、と虎嘯が卓の上に手を置いて鈴を見下ろした。その指に鉄の環《わ》。
「昇紘《しょうこう》が憎《にく》いかい」
 鈴は目を指環《ゆびわ》から離す。虎嘯を見上げた。
「……憎いわ」
「昇紘を憎んでいる奴はあんただけじゃない。奴だって、自分が憎まれてることぐらい知ってる。——あんた、武器を持ってるようだが、使い方は知ってるのか? 本当に自分が昇紘をどうにかできると思っているのか?」
「それは——」
「あの家に小臣《ごえい》が何人いるか知っているか? 昇紘の房室《へや》にいくまでにどれだけの連中とやりあわなきゃいけないか」
 鈴はうつむいた。
「鈴じゃ、無理だ。——誰かがカッとなって殴《なぐ》りこんで、どうにかなる相手じゃねえんだ」
「……でも!」
 虎嘯は目元を和らげる。
「確かにあの子はかわいそうだったなあ……」
 鈴は虎嘯を見上げる。その姿が歪《ゆが》んだ。あっという間にせりあがったものが、あふれて頬《ほお》に零《こぼ》れ落ちた。
「清秀《せいしゅう》……は……具合が……悪かったのよ」
 鈴はしゃくりあげる。
「殺すこと、ないじゃない。慶《けい》を追われて巧《こう》に逃げて、その巧の廬《むら》もなくなって逃げるしかなくて。お父さんが目の前で妖魔《ようま》に食い殺されて、お母さんも死んでしまって。妖魔に襲われたときの傷のせいだと思うの。具合が悪かったの。……あんなに小さいのにとても苦しそうだった」
「そうか……」
 虎嘯は鈴の固く指を組んだ手を叩く。
「病気を治《なお》してもらおうね、って……堯天《ぎょうてん》に行く途中だったの。毎朝とっても苦しそうで、悪くなるばっかりで、滋養のあるもの食べさせても全部吐いてしまうし……すっかり瘠《や》せて、まっすぐに歩けなくて……目だって不自由で……」
 熱い涙が凍《こお》った頬《ほお》を灼《や》いていく。
「置いていかなきゃよかった。宿を探すのに、背負って連れていけばよかった。そうしたら殺されずに済んだのに……」
 あんなに瘠せて、きっともう軽かったのに。
「……こんな街になんか、来なければよかった。もっと早く、別の街でお医者に診《み》せて……」
「おねえさんは、自分が憎《にく》いんだね」
 突然言われて、鈴は夕暉《せっき》を振り返った。鈴の横の椅子《いす》に座って、夕暉は鈴を見つめている。
「昇紘が憎いというより、自分が憎いんだ。昇紘を罰したいというより、自分を罰してしまいたいんだね」
 鈴は瞬《まばた》いた。
「……そうよ」
 瞬きの数だけ涙が零《こぼ》れて落ちていく。
「置いていかなきゃよかった。こんな街に連れてこなきゃよかった。——あたしのせいなの。あたしが清秀を連れてきたばっかりに……!」
 甘い夢に巻きこんで清秀を死なせた。
「死にたくないって言ってたわ。あんな生意気ばっかり言ってた子が、死ぬのは怖《こわ》いって泣いてたわ。でも、死んでしまったの。あたしのせい。……もう取り返しがつかない。謝《あやま》ることも許してもらうこともできない……」
 鈴は泣き伏す。
「清秀は許してくれるわ、そういう子だもの。でもあたしには許せない!」
「おねえさんがいくらじたばたしてもね、死んだひとは生き返らない。……残念なことにね」
「でも……!」
「おねえさんがしようとしたことは、ぜんぜん意味のないことだよ。むしろ、悪い。その恨《うら》みはおねえさんだけのもので、私憤《しふん》によって人を襲えば、昇紘と同じ単なる人殺しになってしまう」
「——じゃあ、昇紘を許しておくの? どんな奴だか聞いたわ。たくさんの人を苦しめて清秀みたいに殺したのよ。これからだって殺していく。それをそのまま許しておくの!?」
 ぽん、と肩を叩《たた》かれた。虎嘯《こしょう》だった。
「許したりしねえよ」
 見上げる鈴に、虎嘯は笑う。
「昇紘を怨《うら》めば、手ひどい報復を喰《く》らう。それが怖《こわ》くて誰もが口を閉ざす。見なかったふり、聞かなかったふり、——止水《しすい》にいるのがそんな腑抜《ふぬ》けばかりだと思わんでくれ」
「……虎嘯、あなた」
 鈴は虎嘯を見上げ、目を転じて夕暉《せっき》を見る。次いで飯堂《しょくどう》の中で黙って鈴を見守っている男たちを見渡した。
「あなた、たち……」
 ——鉄の指環《ゆびわ》。全員が揃《そろ》いの。
「昇紘は必ず倒す。俺たちは時機を待ってる。鈴に先走られちゃあ困るんだ」
 言って虎嘯は懐《ふところ》から鎖《くさり》を出す。環《わ》をひとつもぎ取って鈴に示した。
「昇紘を忘れてどこか暢気《のんき》なところに行け。——そうでなければ、これを受け取れ」
 ただし、と虎嘯はどこか凄《すご》みのある目つきをした。
「これを受け取れば、抜けることはできん。裏切ったときには制裁《せいさい》を覚悟してもらう」
「……ください」
 鈴は手を伸べた。
「裏切ったりしない。なんでもするわ、清秀の——あたしの恨《うら》みを晴らせるんなら!」
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%