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十二国記422

时间: 2020-08-31    进入日语论坛
核心提示:「戻ったか。遅かったな」 堂《ひろま》に入ると、桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]が数人の男たちと話しこんでいるところだ
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「戻ったか。——遅かったな」
 堂《ひろま》に入ると、桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]が数人の男たちと話しこんでいるところだった。桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]は祥瓊を認めると、男たちに手を振る。彼らは席を立って、廂房《はなれ》のほうへ出ていった。
「別の荷が届かなくて」
 祥瓊は簡単に事情を説明し、労《ろう》を経由して鈴から受け取った代金を桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]に渡す。
「それは悪かったな。——労は豊鶴に移った事情を話したか」
「それが——」
 祥瓊は眉《まゆ》を寄せた。桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]に訊《き》くよう言われていたので、それについては話を聞いたのだが。
「どうした?」
「北韋《ほくい》の労の家の、様子をうかがっているふうな娘がいたんですって」
「——それだけか?」
「それが、ちょうど拓峰の人と会っているときで、その後にその拓峰の人のほうを訪ねてその娘が来たそうよ。それで、移動したほうがいいと、忠告されたんだって、労は言っていたわ」
 聞いたままを言って、祥瓊は首をかたむける。
「あの労というひとは、どういう人?」
「侠客《きょうかく》、というべきかな。——柴望《さいぼう》さまの知り合いだ、ということになる」
「柴望はどういうひと? やっぱり桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]を雇っているの?」
「そういうわけじゃない。昔お世話になったひとだと言っておこうかな」
「柴望に世話になったの? それとも柴望の上のひと?」
 |桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]《かんたい》は軽く目を見開いて苦笑する。すぐそばに椅子《いす》を持ってくるように示した。
「柴望さまの上のひと、とはどういう意味だ?」
「なんとなく、そんな気がしたわ。柴望——さまも誰かから言われて動いてるって感じだったもの」
 言葉の端々からそういう印象を受けた。柴望は誰かから頼まれて桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]に伝言を伝えに来たのだと。柴望は王を信じていないけれど、柴望を遣《つか》わした人物は王を信じている。
 そう言うと、桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]はさらに苦笑した。
「なるほどな。……女は鋭《するど》い」
「やっぱり、そう?」
「そういうことだな。——ただ誰も雇《やと》われたわけじゃない。柴望さまはその方に恩義があり、俺はその方にも柴望さまにも恩義がある。和州をどうにかしなきゃならん、と考えることは同じだ。確かに、俺は柴望さまを通じて金を受け取っているが、軍資金を預けられているだけだな」
「それって、柴望さまの上のひとが、実は頭目だということ? ひょっとして、遠甫《えんほ》というひと?」
 桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]はやんわりと笑う。
「遠甫という方は俺も知らない。——それ以上は、訊《き》くな。俺には答えられない」
 そう、と祥瓊は口をつぐんだ。
「野《や》にあって道を説《と》く者がいるな。言葉によって天下の正道を貫こうとする者だ。おそらく遠甫はそういった方なのだと思う。詳《くわ》しくは知らないが。——行動によって道を正そうとする者もある。俺のように戈剣《ぶき》を掲《かか》げる者から、労のように物を仲介することによって俺のような者を支援しようとする者までさまざまだ。この国には、慶を憂えている者がたくさんいる。決して俺たちだけじゃない。——そういうことだ」
「……ええ……はい」
「拓峰ということは、俺たちが呀峰《がほう》を狙《ねら》うように、昇紘《しょうこう》を狙っている連中がいるということだな。——なるほど、拓峰の連中も腑抜《ふぬ》けばかりじゃなかったか」
「その拓峰から来たという人に会ったわ。冬器《ぶき》を拓峰に持って帰った」
 桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]はわずかに眉《まゆ》を寄せる。
「冬器を集めるということは、かなり決起が近いな」
「——そう……」
 祥瓊は声を落とす。大丈夫なのだろうか、鈴は。
「労は柴望さまの知古だ。——いや、さらに上の方の知旧だと言ったほうがいいか。西の麦州《ばくしゅう》に松塾《しょうじゅく》というものがあって」
「——塾って? 少塾《しょうじゅく》のような?」
 上の学校に行くためには、かなりの独学が必要になる。それを補うために識者に願って教えを乞《こう》うこともあり、さらには識者が学塾《がくじゅく》を開くこともあった。
「松塾は義塾《ぎじゅく》どいうやつだな。知識ではなく道を教える。労は確かその松塾の出身だ。松塾は学塾ではないから、様々な人間が集まる。その出身者が必ずしも官吏《かんり》になるとは限らない。むしろ国が道を失っていれば、侠客《きょうかく》を輩出することが多い」
「そう……」
「柴望さまもその上の方も、松塾の出身だったはずだ。そのつての知旧ではないかな。なにしろ松塾は慶では有名な義塾だったから、出身者は多い。——もっとも、いまはもうないが」
「ないの? 松塾が?」
「ごろつきどもの焼き討《う》ちにあった。つい一昨年のことだ。塾舎ごと教師のほとんどが殺されたな。襲った連中の首領は流れこんだ浮民だったらしいが、捕まる寸前に殺されている。どうやら黒幕がいて、口を封じられたようだ。黒幕が誰だかは分からない」
「……なぜ」
「道など説《と》かれては嬉しくない人間がいるということだろう。義塾などというものは、国が傾けば真っ先ににらまれるものだからな」
 そうか、と祥瓊は目を伏せる。
「松塾は麦州|産県《さんけん》の支松にあった。古くは支錦《しきん》という街だな。何百年も前に老松《ろうしょう》という飛仙《ひせん》が出たといわれる街だ。徳を積んで昇仙し、野《や》に降りて道を説いたという伝説の飛仙だが、老松が本当にいたかどうかは知らん。産県はもともと高名な官吏や侠客を輩出した土地だ。産県の人間にはその土地柄に対する自負があるから、国が愚策《ぐさく》を行えば、真っ先に産県の連中が立って罵《ののし》る。——その中心にあったのが松塾だから、それで憎《にく》まれたということだろう」
「ひょっとして、麦州|侯《こう》も産県の出身?」
 |桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]《かんたい》はぽかんと目を見開いた。
「麦侯? ——知らんが、どうした急に」
「労さんのところで会った人が、そういう話をしていたの。麦侯はたいそう民に慕《した》われてたけど、罷免《ひめん》されたって」
 なるほどな、と桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]は苦笑する。
「州侯だからといって、その州の出身だとは限らんさ。むしろ呀峰が麦州の出身じゃなかったかな」
「——呀峰が」
 桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]は困ったように笑う。
「どこにでも賢者がいて、どこにでも愚者がいるものなんだ」
 
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