虎嘯は花庁《おおひろま》に集まった人々を見渡す。
「馬車はまっすぐ郷城に入った。昇紘がこのところ、郷城の官邸から動いてないのはみんなも知っているとおりだ」
うなずく幾多の顔を、陽子は見渡す。
——陽子にはできなかったことを、なすために集まった人々の顔だ。
「なんのために郷城に連れて帰ったのかは知らん。だが、あいつのすることだ、ろくなことじゃねえのは確かだ。生きているもんなら、助けたい」
無言の、力強い同意。
「どうせ近々に始めるつもりだった。それが明日、明後日で悪いわけがねえ」
虎嘯は言って、花庁に集まった人々を見渡す。
「——どうだ?」
これには声をあげての賛同があった。
よし、と虎嘯はうなずく。
「三年、よく辛抱《しんぼう》した。——昇紘の天下を終わらせてやろう」