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十二国記440

时间: 2020-08-31    进入日语论坛
核心提示: 夜空の色が薄くなった。だめだ、と低い声がする。 鈴《すず》は夕暉を振り返る。門の上の箭楼《みはりば》の側、歩墻《ほしょ
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 夜空の色が薄くなった。だめだ、と低い声がする。
 鈴《すず》は夕暉を振り返る。門の上の箭楼《みはりば》の側、歩墻《ほしょう》の上に鈴たちは立ちつくしている。すでに明かりがなくとも人の顔が見えるほどには闇が薄くなっていた。鈴の視線を受けて、夕暉は困ったように笑った。
「待っていても無駄だ。もう夜明けが来る。——逃げよう」
 しんと沈黙が歩墻の上に落ちる。虎嘯が大きく息を吐いた。
「ここはそういう土地だったってことだ。——これでもう、二度と止水には戻れんが、まあ、少なくとも昇紘は引きずりおろした。どうしたって奴は、この乱の責任を取らなくちゃならん。それで良しとしよう」
 落胆の溜め息がその場をたゆたう。
「で、夕暉、どうする」
「最低限必要の物資を、倉から出してまとめてある。まっすぐに北上して山に入る」
「建州に抜けるか」
「……それしか方法がないね。正直に西に向かえば、待ち構えた州師とやり合っている間に、明郭からの州師に追いつかれてしまう」
「南下は」
「駄目。とにかく距離があるからね。馬で追われたら、他州へ抜けるまえに追いつかれる。州師の騎兵と速さを競いたくなかったら、もう北に抜けるしかない」
 騎獣《きじゅう》を使う空行師に対しては、最初から打つ手がない。州師には空行兵の数が少ない。めったなことでは出さないだろうと、そう思っておくしかない、と夕暉は言う。
「旅帥《しきかん》のいない北を突破する。少しでも士気が低いだろうから」
 残った者は怪我人《けがにん》を含《ふく》めてその数約七百、本人たちも驚くほどよく残った。——だが、虎嘯らは負けたのだ。市民の支援が得られなかったのだから。これから敗走していかなくてはならない。
 誰にもそれが分かるのか、武器を持った人々は悄然《しょうぜん》と首を垂《た》れた。
 よし、と虎嘯のきっぱりとした声がとおる。
「どうやら拓峰の連中は腑抜《ふぬ》けだったようだが、ここに腑抜けじゃねえ人間がこれくらいいる。つまりは、俺たちが止水の腑抜けでない人間全部だったってことだ。——まあ、よくも全部集めたもんだ」
 気落ちしたふうの人垣から、笑いが起こった。
「さあて、もうひと暴れして、逃げ出すぞ!」
 よし、と気迫が人々の間に戻る。
「たいしたもんだ……」
 つぶやく声が聞こえて、鈴は傍《かたわ》らに立つ陽子を振り返った。陽子は笑う。
「一言で士気を立て直す虎嘯はすごい。軍にいたら、良い首長になっただろうな」
「そうかしら」
 うん、と陽子は笑う。
 ——その時だった。頭上から羽音が聞こえたのは。
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