街で仲間にそれを聞いた祥瓊《しょうけい》は、頼まれた買い物もそこそこに駆け戻る。正房に入ると、すでに二十からの男たちが集まっていた。
「——|桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]《かんたい》、聞いた?」
集まった人々の中央にいた桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]はうなずく。
「拓峰だろう。——昇紘《しょうこう》の屋敷に焼き討《う》ちをかけた向こう見ずがいたようだな」
言って桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]は、軽く笑った。
「殊恩《しゅおん》、とは気が利《き》いてる。なかなか拓峰の連中もやる」
「大丈夫なのかしら」
肯定も否定もせず、|桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]《かんたい》は考えこむようにした。
「犯人はすでに逃走したらしい。屋敷を襲って、開門前に拓峰を逃げ出した。半数がすでに瑛州《えいしゅう》に向けて州境を越えたらしい。だが、肝心の昇紘は郷城にこもっていていなかった」
「じゃあ、昇紘を討《う》ち取ったわけじゃないのね」
「だから妙な話だ。拓峰には昇紘を狙《ねら》っている連中がいる。冬器《ぶき》を集めるくらいだから、本格的に謀反《むほん》の構えだろう。その連中が、討ちそびれて逃げるものかな」
「……そうね」
祥瓊はうなずく。冬器三十を集める人々が、その程度のことをもくろんでいたとは思えない。
「拓峰の、あの人たちではないのかしら。……ぜんぜん別の誰か?」
分からない、と桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]は言う。
「だが、もしもこれがあの連中のやったことなら、昇紘は苦戦するな」
「——え?」
「連中は莫迦《ばか》じゃないということだ」