城外から五千の民と入ってきた祥瓊《しょうけい》の話を聞いた虎嘯《こしょう》は、呆《あき》れた口調だった。
「明郭《めいかく》にどれだけの人間を残したんだ?」
祥瓊は|桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]《かんたい》を見つめ、桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]は苦笑する。
「こちらに寄こした、倍だな」
どよめきが、束《つか》の間《ま》平穏な箭楼《みはりば》に満ちた。
桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]らが駆けつけた早朝、四門《しもん》の前に展開した州師は残存それぞれ百数十、四方から突入してきた大群衆の前に、あっけなく投降を余儀なくされた。空行師もまた、その数を半数以下に減らして撤退、陽光の満ちた郷城の中には歓声が満ちた。——だが、これで終わりではない。遅くとも明後日には州師が到着する。
「悪いが、三日、州師を拓峰《たくほう》に引きつけてもらわねばならん。三日あれば、明郭に変事ありと聞きつけた州師が強行軍でとって返しても、すでに決着がついているだろう」
虎嘯は天井を仰いで大きく息を吐く。
「上には上があるな。呀峰《がほう》を狙《ねら》う奴らがいたとはなあ」
「なに、俺たちはなにも呀峰を倒して州城を落とそうというわけじやない。呀峰の体面に傷をつけておきたいだけだ。——本当に郷城を落とすとは、そちらのほうが驚いたぞ」
虎嘯は声をあげて笑う。
「それは俺の手柄じやねえ。仲間がふんばってくれたおかげだ」