高校時代というのは、これはまったく、モテませんでした。全然モテなかった。
まあ、同じ中学から行ったコがいて、このコとは何回かデートするくらいで、ね。まあ、キスくらいはしましたけども。
だから、そのコは前につき合ってた女のコのことを知ってるわけですね。同じ中学だったから。
「前の彼女に悪い」
って感じで、すごく気にするわけ。そこはボクはズルいから、
「前のコとはもう完全に関係ない。キミだけだよ。キミしか好きじゃないよ」
ていうわけです。
でも、そのコが硬式庭球部かなんかに入部して、帰る時間が違ってきちゃうと、なんだか自然消滅していったな。
本当に、高校時代の三年間というのは、陽の当たらない期間だったですね。全然。
松本っていうところは、三大不美人地帯ですしね。秋田とか札幌っていう、もっと開放的なところですごせば、ボクの高校時代もよかったと思うんですよね。松本は変にマジメなところだったから、ボクなんか、不当に「遊んでいる」っていう風に見られていたようです。
それにしても、高校生になると、キス程度では満足できずに、セックスというものが頭にある。だから、モテないというのが、かなり激しくプレッシャーになるわけですね。
なんとかしようとしますね。
友だちにやたらとモテるやつがいて、おまけに彼は下宿してましたから、他の学校の、だれとでもOKよ、みたいな女のコを、自分の部屋へ連れ込んだりしていました。それで、彼にそのへんの女のコを世話してもらいまして、紹介されたんです。
「じゃ会おうよ」
「いいわよ」
「じゃあさ、目印になるように、何か雑誌持って待ち合わせしない?」
なんていう話をつけたわけです、電話で。松本駅の改札で、そのコは『男子専科』を持ってきた。ボクはというと、もっとカッコつけて、持っていったのが『日本経済新聞』。
「なに、それ?」
とかいって、そのコ、私帰るっていい出しちゃった。
要するに、お互いに背伸びをしてるわけですよね。女のコは精一杯背伸びをして『男子専科』だとかっていうのに、ボクは『日経』だって。なぜかそのころ、とても『日経』に入れあげていたわけなんだけれど、バカですね。やっぱり、相手に合わせた背伸びのしかたをしないと、ダメなわけですね。