大学に入ったら遊ぶしかない。ボクはそう思ってましたから、大学は東大に行こうと思いました。東京の地図帳を開くと、東大のキャンパスがある駒場と本郷というのは、ほぼ中央にあるわけですよ。
つまり、下宿も都心に捜すことになる。そうすれば、六本木・青山・原宿に通うのがすごく便利でしょ。東大は遊ぶのにとてもいいポジションなんです。これっきゃない! って感じでした。なにしろ高校のときから六本木に行きたい、なんて考えてたから、高二のときに夏期講習とかで代々木ゼミなんかに行くと、あちこち探険するようにしてましたね。東京の宿泊はうちの母親の同級生だかの関係で水道橋にあるグリーンホテル。で、代々木から総武線一本で水道橋まで帰ればいいものを、地下鉄を覚えようと思って、原宿まで行ったら千代田線に乗り換えて日比谷、そこから都営六号線で水道橋まで帰ってくる、なんていろいろやってましたね。
ところが、現役のときは東大を一次試験で落っこっちゃって、結局、駿台《すんだい》予備校に�入学�したわけです。予備校行ってるうちは、女のコとつき合うと、また入試に落ちると思ったから、つき合わなかった。
でも、ちょっといいな、と思ったコはいましたね。
ボクの席の二つ前くらいに座ってるコで、なかなかかわいくて、コケティッシュな感じ。アグネス・ラムに似ていて、みんなから「ラムちゃん」て呼ばれてて、当然、ボクも好きだったんですよ。
そのコがかぜで休んだ日に、ボクが代わりにノートをとってやろうと思ってね。
で、予備校帰りに、みんなで渋谷に行ったときに、わざわざ紀伊国《きのくに》屋でノート買って、
「このノート、彼女のために書いてるノートだから」
なんていったら、
「あいつにはちゃんと男いるんだよ。現役で東大受かったやつが」
という情報が入ってきちゃった。ガクッ。
それを知っちゃうと、もう話しかけられなくなっちゃったりしてね。いままでは、休み時間にしゃべってたりしたのに、なんかぎこちなくなっちゃって、気まずいんですよ。変なもんですね。相手は全然、気にしてないのにね。
というわけで、高校時代も予備校時代も、まったくダメだったんですね。だから、高校時代のボクを知ってるやつは、
「すごくマジメな少年だったのにねー」
なんて、いまごろいってるらしいです。
こういう状態は、すごく長い間続きましたね。中学三年の恋愛から、谷間の時代が、ほとんど永遠に続くかと思ったくらい。長かった。大学に入ってからも、最初のうちはダメで、あのころは車も持ってないから、一番苦しかった。ツラい時代でした。なあんてね。