患者は二〇歳のOL。彼は二四歳のサラリーマン。
「同じ会社に勤めていますが、彼は違う部に所属しています。社員食堂で横に座ったり、時々口をきいたりはします。好意は感じていますが、部が違うので話をすることはほとんどありません。私のほうからおつき合いしてほしいとはなかなかいい出せないで迷っています。彼は青学卒でなかなかやり手という評判です。どうしたらいいでしょうか。社内恋愛で失敗すると会社に私がいられなくなるような気がするんです。恋愛経験二回あり」
あなたの部署にいる、あなたと一番仲のいい女のコひとりだけに打ちあけて、そのコに協力してもらう、という方法がオーソドックスでしょうね。
あなたが、どうしても自分ひとりで、彼に直接打ちあけられない、という場合は、それが方法としては、一般的でしょう。
ところが、このやり方にも、注意すべき点はありますね。協力して、力を貸してもらう女のコに、いま彼がいるんであれば、さほど問題はありませんが、そのコにつき合っている彼がいない場合。これは、あなたとその女のコの友情にヒビが入ってしまう危険性があるわけです。いままでは、お互いに「男のコなんて、いらないわよ。どうして、私たちのまわりには、ロクな男しかいないの」なんていい合っていたのにあなたが彼に思いを打ちあけるということのために、女のコとの友情が崩れてしまう可能性があるんです。このあたりは、十分な注意が必要です。
また、ヘタをすると、力を貸してもらうはずの女のコが、そんなことを頼んだばっかりに、あなたの好きな男性とうまくいってしまうことだって、ないとはいえません。そうなったら、恥をかくのはあなたひとりです。やっぱり、ひとりで勇気を出して、彼に当たるしかないでしょうね。
たまたま社員食堂で、席が並んだら、もちろん自分でそういう状況を作るわけですが、そのときに、彼の茶わんにお茶を注いであげるとか、食後のデザートのプリンを、あなたが彼に御馳走《ごちそう》してあげるとか、さりげない形で、話をする場を作っていかなければいけません。
エレベーターのなか、食堂、そういったところで一緒になったとき、たとえば帰る方向が同じであれば、
「今度、一緒に帰りましょう」
とかって、話しかけたり。彼が残業が早く終わったときには、あとからあなたがついていって、
「夜遅いから、一緒の電車でもいいですか」
なんていって近づいていくのも、ひとつのテでしょう。
基本的に、自分から、単独で切り開いていく、ということが大切です。よくあることなんですが、妊娠しちゃったりすると、すぐに女のコに相談するコがいるでしょ。これは絶対に避けなくてはいけません。
「内緒にしてね」
といってても、必ず、バレてしまうからです。
そのコが、お見合いしてはたからみると、とても幸せそうな、いい縁談がまとまって結婚することになったときに、結婚式の会場で、そのときの妊娠話がヒソヒソ声でいわれたりすることになっちゃうわけです。
だから、妊娠しちゃったら、相談するのなら自分の親にだけすべきです。それがいやだったら、だれにもいわない。中絶の費用が苦しくても、人に助けを求めてはいけません。自分だけで捻出《ねんしゆつ》するように。
サラ金から一〇万円借りて処理する。あるいは、ホテトルで土曜、日曜だけ働いてでも一〇万円は工面すると、このくらいの意気ごみで、まったく自分ひとりだけの力で処理するように心がけてください。
恋愛にしろ、その結果としての妊娠も、そもそも、お互いの自由意志による行動なわけですから、他人を巻き込んで、何かいいことがある、とは考えないようにしましょう。