患者は一九歳の専門学校生。つき合っている男のコは二一歳、大学三年生。
「私の彼って意外と香りにうるさいんです。ちょっと強めのコロンをしてほしいといつも口やかましくいうほうです。私はいいんだけども、家に帰ってから母親が変な顔をしたりして困ることがあります。私くらいの女のコに適した、香水の使い方、場所に応じた種類などを教えてください」
たぶん、その彼はあまり、鼻が敏感じゃないんでしょう。
というのは、強めのコロンなどを大量につけている女のコ、それも、肌に直接つけている女のコが相手の場合、首スジを舌先でスーッと舐《な》めただけで、男のコのほうは舌の先がヒリヒリしたりするからなんですね。
舌がヒリヒリ、ノドがおかしくなったり、次の日は鼻がグシュグシュしたりするものですよ。
あなたの彼が、もっと強いコロンを要求するというのは、どういう了見なのかわかりませんね。ボクにいわせると、あなたに対する愛撫で、結構手を抜いてるとしか思えません。
それでも、というんでしたら「アトマイザー」を使って、洋服の裏あたりにつけるといいでしょう。皮膚にはなるべくジカにはつけないほうがいいんじゃないですかね。洋服でも、なるべく白系統のものにはつけないほうがいいです。体にジカにつけると、日本の化粧品のなかには、カブレちゃったりする例も報告を受けていますから、避けたほうがいいと思います。
また、お母さんが変な顔をするということですが、これは、
「友だちもみんなつけてるのよ」
とでもいって納得させるのがいいんじゃないでしょうか。変に隠そうとするのはよくないと思いますよ。
それでも納得しそうにない場合は、少々時間がかかりますが、持久戦法もありますね。
毎日毎日、努力して、あなたは「フライドチキン」ばかりを食べ続けます。こう脂っこいものばかりを食べていれば、イヤでも体臭が強くなりますから、あなたのお母さんは、あなたの洗濯物を洗うときに、
「ウチの娘は、戦後生まれの戦後育ちだけあって、体臭が強いコになってしまった。だから強い香水をつけるしかないんだわ」
と思って、納得してくれる日がくるかもしれません。