有意義に、よそ行き顔して恋愛を楽しむために、ここで少しばかり「実践編」に入ってみようと思います。つまり「よそ行き顔して楽しむ恋愛のためのガイド」——みんなのお役に立てるかな?
それじゃまず、ホテルの上手な使い方、からいってみましょう。
意外に気がつかないことなんだけど、ホテルの備品は、要求すれば何度でも取り替えてくれます。
「シーツが汚れたから替えてください」
「タオルが汚れたから取り替えて」
「セッケンがチビッたから持ってきてほしいなあ」
何度でも、OK。電話一本で、すぐにベッドメーキングしてくれるし、代わりを持ってきてくれるんです。そういうことは、その部屋に泊まる料金内で、サービスしてくれることになっているわけです。
ボクと同じ二八歳なのに、大学生のころから西麻布《にしあざぶ》でケーキ屋をやったり、メンズ・ブティックをやったりしてる仲の良い男のコがいます。もちろん、最初は、お父さんからお金を借りてお店を始めたのですが、いまでは、ベンツの500SELとBMWの633CSiの二台を乗りまわして、元麻布にあるステキなマンションにひとりで住んでいる、いわゆる、青年実業家です。
フェース的にも、なかなかのレベルに達している彼のまわりには、いつでも、ハデ目な女子大生やモデル、そして、大学を出た後、ビジネスショーとかモーターショーのコンパニオンをやったりしてる女のコたちがいます。
忙しい合間に、丸一日、ポッカリとお休みの日がとれたりすると、この彼は、電話さえすれば、シーツでもタオルでも替えてもらえるという、シティーホテルならではの特典をフルに利用しています。
お昼に、まず、一人目の女のコとお食事をします。代官山《だいかんやま》にあるフランス料理のお店、「マダム・トキ」あたりへ行ったら、ホテルでお昼寝。夕方に、その女のコとお別れすると、今度は、二人目の女のコとデート。夕ごはんを食べて、ドライブをしたり、ディスコへ行ったり、で、もちろん、次の朝まで、ホテルのお部屋で彼女と過ごしています。
エッ、どこで、特典を利用しているのかですって。
もちろん、夕ごはんを食べている間に、ベッドメーキングやバスルームのお掃除をしてもらっているのです。ディスコへ行った後、もう一度、今度は二番目の女のコと一緒に戻ってくると、歯ブラシや彼女のためのバスキャップも新しいものが用意されていて、お部屋のなかはきれいサッパリ。なかなかに鋭い男のコだと思いません?
昼と夜とで、別々の女のコとデートできるなんて、ウラヤマシイの三乗×10というところです。もちろん、こうした充実したお休みの日の過ごし方ができる男のコは、ごくわずかでしょうけれど、一応、こうしたことを知っておくと、たとえば、ベッドのところで、二人、シャンパンやビールを飲みながら、ふざけあっているうちに、ついつい、グラスをひっくり返してしまって、シーツがグチャグチャ、なんてことになった場合でも、ルームサービス係に電話をするだけで、OKになるでしょ。
遅いお昼ごはんをワインと一緒に、二人でとると、体がだるくなりますね。ウイスキーの水割りと違って、ワインというのは、人間の思考を鈍くします。かつてローマ帝国を滅ぼしてしまった勢いで、二人の思考をボロボロにしてしまう。で、二人でお部屋に上がっていって、ベッドへ着く、寝る、それから今度は本当に昼寝する。そして夕方に起きると、お目々もパッチリ。外出して遊んで、晩ごはんを食べてもいいし、帰ってきたら、ベッドはまたきれいにメークされている——ホテルをフルに利用した楽しみ方といえるでしょうね。