夕方からのデートであれば、南青山の「ヨックモック」あたりで待ち合わせて、近くの「ダイニーズ・テーブル」まで歩いて行って中華料理の晩ごはんを食べるとか、それから六本木のディスコへ繰り出しても、いい。
六本木のディスコだったら「レヴェ・ジャポネスク」か、麻布十番の「マハラジャ」、軽く飲みたければ「バー・アンド・カンパニー」が南青山のフロム・ファーストビルの地下にあるし、乃木《のぎ》坂にある「ベラ・ブルー」、六本木まで行かなくても、高樹《たかぎ》町「ダイニーズ・テーブル」の向かい側に、「デアクランツ」というお店もあります。これまた、ボクの小説でいうとこんな風になるのです。
≪それから、私たちは高樹町にあるチャイニーズ・レストラン、ダイニーズ・テーブルで夕ご飯を食べることになった。
中華料理というと、朱塗りの丸いテーブルにぐるりとみんなですわって、という感じが多いのだけれど、このダイニーズ・テーブルは、常磐色《ときわいろ》をしたテーブル・クロスの上に、柑子《こうじ》色のガーベラの花を浮かべたグラスが置かれた、とても、中華料理店とは思えない雰囲気をしている≫(『ブリリアントな午後』)
≪防衛庁前のT字路を青山墓地下の方へ向かうと、途中に米軍の新聞、ザ・パシフィック・スターズ・アンド・ストライプスの編集部の建物がある。それで、スターズ・アンド・ストライプス通りと、近頃では呼ばれている。ミント・バーは、その通り沿いのビルの地下にあった≫
≪ミント・バーは、その名の通り、ミント・リキュウルを使ったカクテルが、数多くメニューに載っていた。脚の長いイスが幾つも置かれたカウンターの他にも、立ち飲みをする場所が、反対側の壁際にある。流れている音楽は、五〇年代のヒット曲ばかり。カウンターの端にあるテレビでは、古い白黒映画をいつでもやっていた≫(『首都高速』)
≪ハッシュド・ビーフが少し辛すぎたので、口直しにケーキが食べたかった。でも、彼は甘い物がそんなに好きじゃないらしくて、防衛庁の向かい側にある、キャッシュ・オン・ディリバリー・スタイルの店、ハリーズ・バーへ行こうと言った。
細長いテーブルに二人で横に並んで、バックギャモンを始めた。西海岸のグループ、アンブロージアの「ビゲスト・パート・オブ・ミー」が、かかっている。黄昏時《たそがれどき》に夕陽の沈む方向へと、ハイウェイを車で飛ばしながら聴いたら、ピッタリなグループだ≫(『なんとなく、クリスタル』)
渋谷がいい、という向きには、待ち合わせ場所は「チャールストン・カフェ」か「リンリーズ」。それから「シスコ」のレコード屋さんを見たり「東急ハンズ」をのぞいてみたりしたあと、代官山までお出かけです。
「ヒルサイド・テラス」の中にある、ビギが経営している「ラ・ポム・ヴェール」でケーキを食べて、食事は代官山駅近くの「フラッグス」でとりましょう。
このお店は、二人でいくら食べても八〇〇〇円くらいのフランス料理屋さんだから、かなりのおススメ、ですね。
≪チャールストン・クラブには、チャールストン&サンと、チャールストン・カフェという、二つの姉妹店があった。それぞれ、六本木のロア・ビル裏手あたりと、渋谷の東急ハンズ向い側にあるカフェ・バーだ。高校生や大学生の間で知らない子は、もう、それだけで、かなり遅れていると思われてしまうくらいに有名だった≫(『六本木チャールストン・クラブ』)
≪たまには、フュージョンに強い原宿のメロディ・ハウスや、渋谷のシスコでロックものをのぞいてみる。音楽好きの淳一は、高田馬場《たかだのばば》のオパス・ワンでマイナー・レーベルものを捜したり、なんと井《い》の頭《かしら》線に乗って吉祥寺《きちじようじ》は芽瑠璃堂《めるりどう》まで、カット盤を求めて出かけることもしている≫(『なんとなく、クリスタル』)
もっと時間を使った半日コースだと、やっぱり、車が欲しいですね。それで湘南《しようなん》方面にゴールデンデートといきましょう。
車で、東名から横浜横須賀道路を通って、逗子インターで降りたら浦賀、三浦海岸のほうへ抜けます。そうすると、東京電力の火力発電所があって、それがなぜか『2001年宇宙の旅』的なシロモノみたいに見えて、面白い。三崎口のほうへ行く道との分かれ道が出てきますが、そっちへ行かずに三浦海岸沿いの道をずっと進んで行きますと、剣崎《けんざき》という、三浦半島の南端に到着します。
そこから、今度は、三浦半島の反対側、つまり西側を戻ってきますと、途中に「三戸浜《みとはま》」というところがあるんです。ここは、非常にいいんですね。岩場がゴニョゴニョッとありまして、すごい、ノルマンディー的な感じの海岸なんです。ここで、持ってきたお弁当といきたいですね。
で、帰りには葉山の「ラ・マレ」で夕食をとって、さっききた横浜横須賀道路で戻りましょう。「ラ・マレ」というのは、「日陰茶屋」という料亭がやっているフランス料理のお店です。経営してるのは、マリ・クリスチーヌの旦那《だんな》さんです。海沿いにあって、夕暮れ時に、遠くを走るヨットを見ながら食事をしていると、最高の気分になれます。
それで東京に帰ってきたら、首都高速の用賀《ようが》出口を降りて、世田谷区は代沢《だいざわ》の国立小児病院のそばにある「〓」という一軒家スタイルのバーに寄って、お開きにしましょう。