ところで、サーファー派が、都心でデートをするときには、どんなところで遊んでいるのでしょうか。サーファー少年が、好んで活躍する場所から、そのタイプを三つに分けてみるのが、サーファーの心意気です。
ひとつは、青山派です。学校でいいますと、青山学院大、成城大あたり。ここらあたりのサーフィンフリークたちは、ファッションとしてサーフィンを始めた人たちですから、実際にサーフィンするときでも、
「近くにシャワーを浴びられる場所がないと、ちょっとね」
みたいな感覚の人たちね。当然、都心の遊び場もファッショナブルでなければ、いけませんわけです。
そこで注目されるのが、青学の西側にあることから「サンセット・ストリート」と呼ばれる通り。この通りには「ブルー・アイランド」というサーフショップがつい最近までありました。彼らは、ここを見てから「ローン」のチーズケーキを食べ、「ダックス」でサンドイッチをつまみ、そして最後は「ポールズ・バー」。ブラコン、ダンコン(男根ではありません。ダンス・コンテンポラリーのことです!)がビシバシかかっている、このお店でドリンクなどするのが、青山派の基本コースです。
さすがに、青山派のサーファー少年たちは、いまどき、サーファーの格好をして六本木のディスコへお出かけすると、
「遅れてるのね」
と、バカにされるのを、知っていますから、そういうところへ行くときは、シッカリ、イタカジ格好をしてお出かけします。
青山派が、サーフィンタイム以外はファッショナブルに、とする人たちだとすれば、自由ケ丘派は、陸《おか》にいるときもサーフィン気分のまま、という完璧《かんぺき》サーファーと、一応青山派にいたんだけど、ああいうのは疲れちゃった、ということで自由ケ丘派に移行してきた二タイプがいます。
この人たちの行きつけのサーフショップは、目黒通り沿いにある「タウン&カントリー」で、一昔前までは、このお店のロゴの入ったシールは、貼《は》っているだけで「やったね」の世界だったのですが、いまではもう、茨城あたりのポイントまで行かないと、その効果が発揮されなくなりました。
もっとも、旗《はた》の台《だい》にある香蘭《こうらん》、高輪台《たかなわだい》にある頌栄《しようえい》といった、校則の厳しい女子高生は、「タウン&カントリー」のシールを通学カバンに貼れたらなァ、と常日頃から思っているので、「このシール、あげるよ」なんて自由ケ丘派の男のコにいわれると、コロリとまいってしまう傾向もあります。
自由ケ丘派の人たちは、サーファーはメジャーになってはいけない、テニスやゴルフの連中とは一線を画さねばならない、と考えているので、デートの場合も、自由ケ丘の「バター・フィールド」とか「イングランド・ヒル」とかいった、常連ばっかりのお店へ行きます。
「アン・ミラ」や「カスタネット」といった、日曜日に大宮や熊谷《くまがや》から「キャンプ・ビートル」を見にきたカップルが、帰りに寄るような店のことは、
「オレたちのシマを荒らしやがって」
とニガニガしく思っているので、絶対に入りませんね。