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父子鷹12

时间: 2020-09-26    进入日语论坛
核心提示:鯛 小吉の声がこれ迄きいたこともなく腹にこたえて大きかったので、世話焼さんも、ぎくっとして、あわてて、玄斎の方へ「そ、そ
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 鯛
 
 小吉の声がこれ迄きいたこともなく腹にこたえて大きかったので、世話焼さんも、ぎくっとして、あわてて、玄斎の方へ
「そ、そ、それあいけませんよ先生」
 ごくり/\と唾をのんだ。
「そんな物をお受取りなさるなら、はじめから、お力にはなって下さいませんよ」
「と、といっても、こ、このまゝでは世話焼——」
 玄斎も吃っている。
「いゝですよ。勝様はね、御旗本でございますよ。え、本所《ところ》の方《かた》でございますよ。千両万両お金を積んだって誰がばくちの用心棒に行って下さいますものか」
「そ、それは重々わかっている」
 玄斎の額に汗が玉になった。
「おわかりなら、それだけでいゝんでございます。あなたが、心から有難かったと思っていらっしゃる。それだけを喜んでいるお方なんですよ」
 世話焼さんのいっている間、小吉はじいーっと玄斎を見つめて
「おれはあっちで商売がいそがしいのだ。命が惜しくば早々に帰って貰おう」
 と一息ついて
「お、先生、おのし小吉と約束した通り貞女の妹御を大切にして上げなけれあ、今度あ唯事じゃあすまないよ」
 小吉はそのまゝ市《いち》の方へ立って行って終った。
 玄斎は頭をふり/\、さてどうしたらいゝだろうと、それから暫く世話焼さんと話していたが、憖《なま》じいな事をしては、あべこべに勝様を怒らせるだけだから、じいーっと時機を見ているがいゝだろうということになって、やがて帰った。
 世話焼が市へ出て来ると、小吉は頻りに刀を見ていて、もう玄斎のことなどは忘れているようであった。
 日が暮れかけて市を出た。竪川べりへ行こうとする角地の松平能登守|下《しも》屋敷の塀の裾にまつわるような靄が見えて、晩秋の匂いが妙に胸にしみる。その塀に少しばかりの破れがあって、そこから庭に黄色い菊の一ぱいに咲いているのがこっちを覗いているようによく見えた。
 月代をのばした浪人が三人、揃いも揃ってふところ手で素足に雪駄をはいて、その塀を曲って来たのと、ぱったり逢った。
「あ奴らだ」
 小吉はにやっと笑った。対手もすぐにそれと気づいて、あわててふところ手を出すと、三人一緒に立停った。
 小吉は知らぬ顔で真っすぐ川ッぷちの方へ行こうとした。村田長吉へ寄って見る気である。
 浪人達はにこ/\っと笑った。そして三人揃って、腕を膝前へのばして頭を下げた。
「おゝ、誰かと思ったら——」
 小吉も頭を下げ乍らにや/\した。
「は、昨夜はまことに御無礼を仕りました」
 こんな人達にしては鄭重な口のきゝ方である。
「お互だ——が、おのしら、いつから本所《ところ》にいるえ」
「はあ、つい一と月程前に、下総から出て来まして」
 もう三十位の一番年嵩らしい人相は余りよくないが割に温厚そうな人物がそういって
「お噂をきゝ、是非共一度御引見をいたゞきたいと存じて居りました」
 いっそう腰を折るようにした。
「おれがような者に逢ったとて、百文の徳にもならないが、お互い様、ばくち場の用心棒などというものは、余り褒めた生業《なりわい》ではないね」
「はあ、実は上総下総の辺りで剣術の修行を云い立てにばくち打ちの親分手合のところを渡り歩いて居りましたが、あの辺は近時、ひどく浪人の取締がやかましくなりましてな。浪人を留置いてはならない。百姓町人は剣術を教わってはならんという、われ/\糧道をたたれて、仕方なしに江戸へ出て来ました」
「はっ/\、江戸はだん/\掃溜になるわ」
「恐入りました」
「侍かえ」
「いゝえ、三人とも東金の百姓の子で、渡りものの剣術の先生から、手ほどきを受け、また道場などにも住込んで稀には勝てるようになったのが、病みつきになりました。先生、斯様な往来もいかゞ、改めてお屋敷へ伺わせていたゞく事には参りませぬか」
「真っ平。用ならこゝできこうではないか」
「はあ」
 三人が顔を見合せた。そして、さっと一緒にまた頭を下げて
「お願いします。御門人の端にお加え下さい」
 小吉は大声で笑って、はげしく手をふった。
「はっ/\、お、お、お前ら何にを云う、剣術の弟子になりたいなら亀沢町に日本一の男谷精一郎というものがある。一日でも二日でも本所《ところ》の水をのんでいながらそれを知らねえはないだろう。おれにきいたと、今からでも直ぐにお行き」
「い、いゝえ、わたし共は是非先生にと、毎日それを語り合って、かたく心にきめて居るのです」
「定めるは、そっちの勝手だが、こちらは御免だ。男谷へ行って、東間陳助というものへよく頼め」
「せ、せ、先生」
 追いすがる三人へ、小吉は大きな目をむいて
「馬鹿も休み/\いうものだ」
 そういうとそのまゝ三ツ目橋へかゝっていた。
 小吉は駈け出した。三人は追ったようであったが、すぐに見失った。
 花町の松五郎へ寄ったら、松五郎は組合の揉め事で出かけていて留守だったが、長吉は割に広い土間の隅に茣蓙を敷いて、薄暗くなっているのに、夢中で薄板へ漆喰絵をかいていた。鯛であった。
「その鯛は不味《まず》そうだねえ」
 覗くようにしていった。
「え?」
「これあ何処で捕れる鯛だ」
「今日、小田原町の魚河岸でとっくりと見て来ました」
「如何に商人でもお前も江戸っ子ではないか、こんな鯛は喰うまい、これは場違いものだよ」
「はあ」
「河岸にこんな鯛があるのが不思議な位だ。これは田舎ッぺえの食う奴だ」
「はあ」
「こゝの家の松五郎に頼んで、あすこの頭《かしら》に渡りをつけ、ゆっくり見せて貰うがいゝ。江戸前はね、八百八町からうめえ餌が品川の沖に流れ出て行く、それをたらふく喰っている上に、内海《うちうみ》で波も静かだから遊びながら育っている、見ただけで、惚れ/″\する程ふっくらとしたものだ。それから活鯛、場違い、それもところにより、みんな違う」
「有難うございました」
 長吉はすっかり職人の身拵えで、切見世のさわぎの時から見ると、ぐんと顔の色艶もよくなっていた。
「どうしているかと心配で寄って見たが、元気になって何よりだ。それともまた侍になりたいか——そう/\、こ奴あ禁句だったっけ。お糸の事はもう少々の間《ま》おれに任せて置け、悪いようにはしないよ」
「はい」
 茶を一ぱい飲んで小吉は何にかしらほっとして屋敷へ帰った。もう真っ暗だった。
 あ奴らあれからどうしやがったと、途《みち》でさっきの浪人の事を思ったりしたが、姿も見なかった。
 屋敷では、麟太郎がねていて、お信が枕元へ薄桶をおいて、手拭で頻りに喉の辺りを冷やしてやっていた。
 小吉はびっくりして
「どうした」
「道場で御稽古が少々きびしかったのでございましょう、喉がはれて居りました」
「どれ、見せろ」
 しめした手拭をとって
「痛てえか」
 麟太郎は首をふって
「いゝえ。母上はおおどろきなされましたが、剣術の稽古はこれ位でなくては駄目だと思います」
「対手は誰だ」
 麟太郎はにこっと笑って
「島田虎之助先生です。わたしは、やっぱりあの先生が大好きです」
「凄い突きをくらわせたな」
「わたしは羽目板まで飛び、はね返って転倒しましたが、男谷の先生は宜しい/\と仰せでございました」
「そうか。精一郎が」
「はい。東間さんが、何にか申上げたようですが、男谷の先生は馬鹿をいうなと、おっしゃって笑っていられた」
「うーむ。どうだ剣術というはひどかろう」
「いゝえ、父上、わたしは、学問よりは剣術の方が好きでございます。一生懸命に修行をして、間もなく、島田先生でも父上でも羽目板へ突飛ばせるようになります」
「そうか、うむ、そうか。よし、よし、よし」
 小吉は珍らしく眼尻に深い皺を寄せて、ぽん/\と麟太郎の肩を軽ろく叩き乍ら
「おれは、お前に、ぶちのめされる日が待遠いよ」
 と笑った。
 この時お信が、ふと自分の膝を打って
「お隣りの御隠居様が若い女子《おなご》どのをつれてお屋敷へお戻りになっていられますよ。さっきから二度も三度もお越しなされて、小吉の帰りが遅いのでこの首が——と、あのお肥りの短い首をぴしゃ/\ぴしゃ/\お叩きなされて、鶴のように長くなると御戯れをおっしゃってでございました」
「女をつれて帰えったと。どうせ碌な事ではないだろう」
「お顔の色は余りおよろしくはござりませぬが、始終にこ/\遊ばして、御機嫌のように見えましたが」
「雁が|ねぐら《ヽヽヽ》へかえって来たとなら行ってやらずばなるまいの」
 小吉は庭下駄を突っかけていつもの切戸へ行った。
「そこは駄目でございます、あなた」
 如何にも引いたが、戸は開かない。
「どうしたのだ」
「はい。先程隠居様のお話で、わたくしははじめて知りましたが、あちら側で釘付けに致しましたそうで」
「うむ?」
「用人の大川丈助が致した、怒鳴りつけてやったと申されて、御自分も玄関からお越しでございました」
「はっ/\。そうか、釘づけになろうがどうなろうが、こっちは何んの支《つか》えもねえ。却ってあっちが困るだろう」
「奥様《おまえさま》がそっとこちらへ見えられないようにしていたので御座いますねえ」
 小吉はお信の前で表べは笑ったが、内心はむかついていた。
「用人奴、いよ/\唯の鼠ではねえ」
 といって、玄関へ廻った。
「しかし世にはふしぎな屋敷もあるものだ。殿様が米屋の娘を引っぱり込み、隠居が行者の女をつれて来て一緒にいる。これで千五百石だ」
 お信も思わずくす/\笑った。
 岡野へ行くといきなり用人部屋へ入って行った。
「おのし、大工か」
「は? これは勝様」
「切戸の釘付けは大層器用ではないか。唯、惜しむらくは人間に足のあるのを忘れているわ」
 大川丈助は、真っ紅になった。
「隠居がけえっているそうだが、逢いに来た」
 怒鳴るようなその声を、待っていた江雪がききつけて飛出して来た。小吉を見て脚《あし》がもつれた。暫く逢わなかったが、ぼんやりした行灯の灯でもわかる、一と頃よりいっそう肥って顔は紅い。しかし何んとなく生気が沈んでいる。一度青々と剃って真言の坊主になったが、見ると、もうだいぶ毛が延びて、風体は昔の姿になっている。しかし清明がよくやっていると見えて着物に垢はついていなかった。
「いくらか中風の気味ではないかな」
「いや/\」
 隠居は大袈裟に首をふって
「飛んでもない。まだ/\花を咲かす気だよ」
「それはいゝが坊主はおやめか——してまた柳島からいつ帰られた」
「帰りたくて帰った訳ではない。あちらは危なくていられなくなった。いや、わしではない、清明を、血に飢えたような狼が大勢取巻いてな。それに、勝さん、おのしも危い」
「え? 何あんのこと」
「まあ/\、立話でもない。こっちへ、こっちへ」
 暗い廊下から清明も出て来た。
「はっ/\。清明がついて来たね。して見ると、盲目の唖娘は物にならなかったらしいね」
「いや、なるのだが——」
 と清明を見て
「これが厳しくてなあ。どうにもこれは訳のわからぬ奴よ。あの娘にそんな事をしては天の罰、地の罰、神の罰、仏の罰、悉くがわしに降るとおどかし居る。な、勝さん、一つからだに、そんな罰が当てられて堪るものか。嘘をつけと叱ったが、わしは時々目まいをしたりして、ふと恐ろしくなってな。当分あの娘は見合せだ」
「それは結構。ところで、わたし迄が危ないというは、どういう話かねえ」
「まあ/\」
 江雪は、奥の一と間へ落着いて、こゝではじめて清明が挨拶をした。別に変りがないがやっぱり顔色は少しよくなかった。
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