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父子鷹14

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:付懸《つけが》け 小吉はにやっとした。 と思ったら兵庫は片手の斜め上段から、急に刀の切っ先きをおろして下段の深い構えに変
(单词翻译:双击或拖选)
 付懸《つけが》け
 
 小吉はにやっとした。
 と思ったら兵庫は片手の斜め上段から、急に刀の切っ先きをおろして下段の深い構えに変った。
 小吉はまたにやっとした。
 そのまま兵庫は動かない。動かないどころか目ばたき一つしない。呼吸をしているのさえわからない。
 勝手でぽたり/\と何処からか甕へ水の落ちるのが、不気味に大きく響いて来た。
 兵庫の顔色が蒼ざめて、顔一面がてか/\と脂ぎって来るのと共に、ぷつり/\と一粒ずつ響きをたてるように汗が吹出した。
 畳へ突立っている池田鬼神丸国重が時々ゆらめく蝋燭の焔にまるで動いているし、殿村南平は腰をぬかした恰好で腕を左右に畳へついてやっと慄えを支えている。
 ずいぶん長い刻《とき》が経ったような気だ。立っていた兵庫が出しぬけにふら/\っと崩れかけた。
「駄目だ、おれは斬れない。おれはもう駄目だ」
 そう云うと、力なく歩き出して、抜刀を下げたまゝふり返って
「勝、もう二度と逢わん」
 そのまゝ外へ出て行って終った。浪人達も上気した眼をうろ/\させて、あわててその後について行った。
「おい、お待ち」
 と小吉は立ち乍ら、畳へ突刺した国重をぬくと同時に、目にも見えぬ早業で鞘へ納めた。ぴしッと鋭い鍔鳴りがした。
「心ばかりの餞別を差上げる」
 紙入から小粒を出して、ふところ紙へひねると、一番後のひょろ/\した浪人の片手をぐっとつかんだ。対手は何にをされるかと、ぎょっとしてがた/\がた/\慄えていた。
「渡辺さんに伝えよ。もう剣術はお止めなさいとな」
「な、な、何?」
「慄え乍ら空威張りをするはお止し。渡辺さんはな、今おれに向かった先きの斜め上段はこのおれとかつて男谷道場で相対した時のあの構えだ。二度目に下段に変ったが、あれは弥勒寺《みろくじ》で酒井良佑先生に手首を斬られた時の構えよ。それが——どっちもあの時よりぐんとお落ちなされた。剣術は心の持ち方でこれ程にも違って来るものかと、おれもしみ/″\肝に銘じた——と、おのし、間違わずに先生に云え」
「う、う、う」
「何にを唸るえ。これから先きお前らの行くは所詮は雪のちらつく奥州路より外はねえだろう、寒さに向ってどうやら病気らしい渡辺さんには気の毒だが、大切《たいせつ》にしてお上げ」
 浪人達は兵庫を真ん中に、一かたまりになっての闇の中を巻くようにして去った。一人遅れたのが、やっと小吉の手をはなされて、あわをくって前倒《のめ》るようにこれを追って行く。
「勝さん、あ奴ら一たまりもなかったねえ」
 隠居が、清明としっかり手をとって、真っ暗な中から出しぬけにあらわれた。
「危ないから寄るなと申したに」
「隠居はしてもおれも侍よ」
 そういう江雪へ小吉はへら/\笑った。
「助太刀をしてくれる気だったのかねえ」
「はっ/\/\/\」
「あ奴らは、もう二度とこゝへは来ないから安心よ」
「だが、また何処かで悪さをするなあ、きっと」
「そうだねえ。浪人は何にかしなくては喰って行けない。さて何にをしようにも道はないとなれば、所詮あんな事になる。近頃御政道が唯臭いものに蓋の有様で、余り貧しすぎるからねえ」
「お負けに何にもかも賄賂でなあ」
「そんな事はもうあたしらの知った事ではないよ。が、隠居、あなた顔色が余り良くない、少々酒をつゝしむがよくはないかえ」
「いや、酒なんぞは余り飲まないよ。飲みたくも殿様から、幾度、使をやってもとんと金が貰えないのでなあ」
 小吉はうなずいて
「殿様も滅法ふところは苦しいが、まかない用人の大川丈助というは大そうなやり手らしいから今になんとかなりやんしょうよ」
「さて、どんなものか」
 隠居は大きく舌を鳴らした。
 清明は、何んだか後が怖いから暫く小吉に泊っていて下さいと頼むが、小吉は
「おれは毎日のように道具市で稼いでおのが借銭をけえしている身だ。一日だって、こんなところにはいられない」
 といって、もう、夜明けに間もないという刻限なのに、柳島から帰って行った。
「小普請《むやく》で置くは惜しい男だ」
 後で隠居が呟いた。
「怖いものなしとはあゝいうお人の事でございますねえ」
 と合槌を打つ清明へ
「曲った事は爪の垢程もなさらぬから怖いものがないのだよ」
 殿村が尤もらしい顔をした。
「おや?」
 と隠居は
「何処かで誰かもそういったのをきいたような気がするね。お前は何処できいた」
「わたしが行く摩利支天や妙見の講中などは、みんなそう云って居りますよ」
 殿村はそういってから
「いやもう今となっては本所深川《ところ》は元より、江戸中でも、あのようにお顔の利く方はありませんね」
「そうだ。曲った事をしないは、わしも同じだが、こっちはとんといけない。はっ/\は」
 隠居は如何にも、うれしそうな笑い方をした。
 お昼近く小吉は、岡野へやって行った。丈助は煙ったいものが来たような顔をして、何にかしらこそ/\している中に、小吉は奥へ通った。孫一郎が米屋の娘をかえして一寝入りしてたった今起きたところであった。
「殿様、あなたは千五百石の後嗣だ。柳島の隠居の小遣銭位を欠かさないようにしてあげるが本当ではないか」
 顔を見詰めて小吉に云われて孫一郎は
「いや、それは心得ている。用人が出来るだけ事欠かさぬように届けている」
「ほう。隠居は貰わぬといっているが」
「そんな事はないでしょう。御番入の日勤の立替金など諸勘定の控を二冊拵えて、一冊はわたしのところへ来ている。まだ仕上《しあげ》勘定はしていないが、悉く用人の才覚で隠居の方も間違いなく行っている筈ですよ」
「ちょいと訊きやんすがね、わたしは御隠居にも、殿様にも、岡野の屋敷の事は宜しくと頼まれている。どうだ、殿様の気持は今も同じか」
「元より変りはない」
「それでは些か御節介かは知らねえが、殿様の手許にあるその勘定控を拝見したい」
「よろしいとも。わたしは、面倒だから、遂ぞあの控は開けて見た事もない。先生が見てくれるとあればこんな有難い事はない」
「殿様は見た事はないのか」
「あゝ、見ても見なくても同じと思い見なかった」
「ふーむ」
 と小吉は少し皮肉に
「流石あ千五百石の御大身《ごたいしん》だ。違ったものだねえ」
 にや/\笑って
「勝が家は小高《こだか》だから、銭勘定はよくわかる」
 そう云ったが、内心では、とはいうが、おれも実は怪しいもんだよ、とひとりでおかしかった。
 孫一郎がくだらない黄表紙などを取散らかしてあるあっちを探し、こっちを探し、その辺をいっそうひどく探したが
「無いねえ」
 と首をふった。
「一昨日《おととい》は確かにあったが」
 それからまた暫く探したが、結局は何処にもない。その様子をじっと見ていた小吉が
「無いかも知れねえ」
 といって、間をおいて
「用人をよんで訊いて見なさい」
 とちょいときつい顔をした。
 大川丈助をよんだ。
「勘定の手控がここへ来ていたのう。無いが、知らぬか」
「はい。差上げてあるものには、わたくし奴は手もふれませぬ。あれをお無くしなされては後々困りますで御座います」
「そうかは知らぬが、無い。でも、お前のところに確と書留めたものがあるのだろう」
「はい。それは御座います。が、殿様のお手許のは、一々、収支にお許しをいたゞいた証拠になりますもので」
「いや、わかりさえすれば宜しいのだ。勝先生が見たいとおっしゃる、お前の手許にあるをお目にかけてくれ」
「はあ、それはお安い事ですが——勝様、こちらへ持参仕りましょうか」
 丈助は落着き払っている。小吉は睨んで
「持って来い」
 といった。丈助が立去ると
「殿様、困った事になったねえ」
「え?」
「勘定控が用人の手許のものが一冊だけでは、どう付懸《つけが》けをされて見ても、こっちが、|ぐう《ヽヽ》とも云えねえよ」
「ま、真逆、あの用人が付懸けなど——」
「殿様や御隠居のようないゝ人ばかりだと、世の中に喧嘩も騒動もねえのだがねえ」
 孫一郎は目をぱち/\して黙った。
 用人が帳簿を持って、如何にも狡そうな目つきで、気配をうかゞい乍ら入って来て、そっと小吉の前へ押し出した。
 小吉はそれを引寄せると、膝へのせて、ぱら/\とめくった。
「こっちに控《ひけ》えがねえのだから、見ても見なくも同じだが、勘定仕上はいくらになってるのだ」
「はい。少々気がかりで先程一寸仕上げて見ましたところわたくし奴の御立替金が三百三十九両に相成って居ります」
「えーっ?」
 孫一郎が突拍子もない大声で叫んでぐうーっと反《そ》るような恰好をした。
「さ、さ、三百三十九両だと? これ、愚かを申せ。間違いであろう」
「殿様、そのような事を仰せられましては、わたくし奴が当惑を仕ります。殿様お手許のお控さえあれば一目瞭然なのでござりますが」
 しゃべり乍ら大川はちらッ/\と上目遣いに小吉を見る。小吉はじっと見すえて、低い声で
「それはお前の総〆だろうが、付懸けの分を差引いて、本当のところを仕上げて見よ」
「え?」
「付懸けを引けというのよ」
「と、と、飛んでも御座りませぬ。勝様、わたくし奴が付懸けなどと、大それた——それは余りな仰せ方でござります。一々殿様の許へお控を差上げて御許しをいたゞいて居りますので」
「おい」
 と小吉は気味悪くにやっとした。
「大川丈助、人を盲目《めくら》にするもいゝ加減にしねえか。この屋敷で瞬く間に、そんな大金が何処へ要ったのだ。柳島の御隠居がところの小遣銭せえ不自由というに、お、付懸けはありませんなどと——勝はな、小高もんだ、銭勘定は細けえのだ」
「御無態を仰せられます。いかに先生でも、それは我慢のならぬお言葉でござります。御手許のお控とつけ合せ下されば、御納得が参りましょう」
「ふん、見え透いた馬鹿な事をしやがるわ。お、ある屋敷にこういう話がある、話してやるから、もっとこっちへ寄ってよっく聞け」
 大川はほんとに一膝前へにじり出た。だが顔は真っ蒼だ。
「聞けとおっしゃれば、何んでも謹しんでお伺い申します。が、このわたくしに莫大な立替金を仰せつけなされた末に、付懸けなどと因縁をおつけなさる。如何に土地《ところ》でお顔のお広い勝先生でも聞捨てにはなりませぬ。天下に無法は通りませぬ。御支配もあれば御奉行様もお出でなさる」
「まあ黙って聞け。いゝか、ある屋敷の用人が帳簿を二冊拵えてな、一冊を殿様へ上げ、この方はちゃんと書いて置き、自分の手許にある奴には、さんざ出鱈放題の付懸けをして、頃を計って一芝居打った。その殿様は日夜酒に浸って、しかも滅法な女好きだ。近所の米屋か何んかの娘を引きずり込んで腑抜《ふぬ》け見たいになってね、正体もなく寝込んでいる隙に、その用人と娘がぐるで差上げてある手控をそっと盗み出して焼いて終った」
「えーっ?」
「お、大川、証拠の控はなくなったじゃあねえか。しかも、その女ってのあ、用人とは縁つゞき。素人女だが、あばずれだとよ。え、お前、これをどう思うえ。もそっと近く寄れよ、え、もそっとよ」
 大川丈助の膝が慄え出して来た。孫一郎はあっけにとられて、まじ/\と代り番こに二人を見ている。
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