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父子鷹21

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:御紋服 しと/\と雨が降って来た。 小吉は真面目くさって云いつけた。「おい、東間、今夜は退屈だからおれが昔からの名将智勇
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 御紋服
 
 しと/\と雨が降って来た。
 小吉は真面目くさって云いつけた。
「おい、東間、今夜は退屈だからおれが昔からの名将智勇の侍のはなしをしてやるといって、代官を呼んで来てくれ。こういう話は一人でも聴手の多い程やり甲斐のあるものだ。内儀も子供らも一緒に来るようにな」
 東間が不思議そうな顔で立つのを
「お前、おれを軽んじていやがるな」
 と、叱ったが、小吉は自分でもくすっと笑った。東間はあわてて
「と、と、飛んでもない事です」
 と恐縮した。
 半刻ばかりして、みんな揃った。代官の子もちゃんと衣服を着替えて二人来た。小吉は一刻近くも関ヶ原の戦の話をした。
 大よろこびでみんな帰ってから、堀田が小さな声でそっと小吉へきいた。
「先生、はじめて伺ったが、あれは本当のお話ですか」
「はっ/\。本当にきこえたか。こら堀田。あれをほんとに聴くようではお前の儒者も|いかさま《ヽヽヽヽ》だな」
「は?」
「あれはみんな出鱈放題よ」
「おゝ、これは驚いた」
 と横から東間が膝を打って
「作り話だからこれ悉く初耳だ。先生、明夜もおやり下さい」
「こ奴、おれをおのが退屈の肴にしやがる気か。だが、やるよ。飽きる程聴かせてやる」
 堀田も大よろこびで
「実に前代未聞の関ヶ原、どうぞ、頼みます」
 といった。小吉は、一寸、真顔になって
「お、夜はおれがやるが、堀田、お前、あしたから昼前に、得意の大学孝経の講釈をやれ。みんな呼んで聴かせるのだ」
「承知いたしました」
「あ奴ら悉く無学で本当も嘘もわからない。充分面白おかしくやれ」
 云われる迄もなく堀田は、そんな事は心得たものだ。次の日から昼は堀田、夜は小吉のはなしが続いて、余り仕事もない田舎の代官陣屋の者達は大よろこびであった。
 二、三日したら代官がそっと小吉に耳打をした。
「百姓共が内々相談をしている。わたしには頻りに銀主《ぎんしゆ》を探しているように見えますがな。茂左衛門が申すには路用位は何んとか致しますから、勝様に、いゝ加減のところで諦めて江戸へおかえりを願ってくれないかなどといっている。が、勝様、わたしはもう一押しだと思います」
 小吉はぽんと代官の肩を叩いて
「山田さん、あなたがそうして味方になって呉れるは誠に有難い。わたしはとっくに睨んでいる、この村はまだ/\五百両や八百両は出せる筈だ。主家の大事というに飽迄いゝ加減をいうと、今に百姓ばらに一泡を吹かせて出させてやるよ」
 夜小吉の話をしている時、二日ばかり縫箔屋はいつもその席にいなかった。尤も五助と縫箔屋には、暇があったら、村中を出歩いて無頼《やくざ》な奴などにも付合い、心して村方の様子をさぐるように云いつけてあるから、東間も堀田もそう思っているが今夜も居ない。
 小吉は居間へ戻ると怖い目をして五助へいった。
「長太奴、碌な事はしていねえな」
「へ、へえ、でも別に」
「大層ぐれていやがると江戸でみんなから聞いていたが、真逆におれが目の前で尻っぽを出す程すれっからしちゃあいまいと思った。おれもとんだ自惚よ。今夜は、あ奴は何処へ行っている」
「存じませんが——実を申しますと、この四、五ン日村方の者を寄せて、何処かの堂宮でばくちを気付《きづ》いているような態《ふう》が見えます」
「どうせそんな事だろう。昨夜もけえって来ておれが目を逃げるようにして寝部屋へ入ったが、ぷーんと酒の匂いがした。おれがあれ程云ったに、あ奴め」
「今夜よく云ってやりましょう」
「いや、黙ってろ。放っておいても人間というは、自分の尻は自分で拭わなくてはならなくなるものだ」
「へえ」
「それにつけても最初の中は岡野が家来で、左衛門太郎七などと呆けていたが、おれからしてが、いつの間にやら地金が出て、素姓も代官には知れて終った。縫箔屋が化け切れないも無理はない。代官はお前らおれとの間柄も唯の家来ではないと気がついているから、どの道、こっちも生優しい事では引込めねえ仕儀となったようだ」
 といった時に、小吉はちょいと首をかしげて聴耳を立てた。
「何んだ」
「何んでしょう。火事でしょうか」
「見ろ」
「へえ」
 五助が飛上って障子を開けて四方を見たが火の手はない。東間も堀田も駈込んで来た。
「寺で早鐘をついているようですが」
 そういう東間へ
「そうらしいな」
 とにやりとして
「おい五助、縫箔屋のばくちは、いかさま賽《さい》でも使いやがるか」
「へ。やるかも知れません」
「そ奴がばれたのよ。あ奴、今にこゝへ転がり込んで来る。村方がこゝを取巻いて。これは一騒動になるだろう」
 小吉のいった通りだ。縫箔屋は、額から血が頬まで垂れて、着物の片袖はもぎ取られたような恰好で
「せ、せ、先生、先生」
 泥だらけで泣き乍ら転がり込んで来たのが、小吉がまだ言葉を切らない中だ。
 小吉はみんなの立騒ぐのをじっと見て
「おれは知らないよ」
 といった。
「せ、せ、先生、申訳ごぜえやせん。ど、どうぞお助け下さい」
 縫箔屋は小吉の膝へ頭を突込むようにして平伏した。
「いゝや、おれは知らない。そうでなくても百姓らは、ちょいとした落度でも見つけたら何んとかそれへ難癖をつけてかえそうとしているのだ。いかさま賽で銭を取ろうなどという吝ン坊な量見はおれは嫌えだ。手前《てめえ》江戸っ子ではなかったのか」
「す、すみません、先生、悪うございました」
「おれに詫びても仕方がねえ。え、長太、さ、これを」
 小吉はうしろに架けてあった国重の刀を鷲づかみにすると、ぐんと縫箔屋の鼻っ先きへ突出して
「貸してやる。寄せて来た百姓共を斬っ払え。こゝは御旗本岡野孫一郎の五百石を支配する代官陣屋だ、斬っ払って支《つか》いない。それからお前はあわてる百姓の目の前で見事に立腹でも切って見せるのだ。死ねなかったらその時はおれが介錯をしてやる」
「せ、せ、先生、おゆるし下さい。に、二度と、こんな事は致しません。ど、どうぞお助け下さい」
「いやだ」
 寺の鐘はまだ鳴っている。百人位の百姓がぐるりと代官陣屋の小吉の泊っているところの裏表へ押しかけているのがわかった。
 小吉は、元より縫箔屋が受取ろうともしない刀を、立ち乍らすうーっと腰へさして、黙って門の外の百姓の方へ出て行った。
 暗い中に、もう、竹槍などを持っている者がある。しかし流石に小吉の姿を見ると、ざゝッと潮の退くように後ずさりをした。
「おい、茂左衛門、隠れていねえで出て来いよ」
 にや/\しながらそういって
「何あんだ、居ねえのか」
 途端に、ぷうーっと大きな屁を一つ放って、くるっと踵をかえすと、そのまゝ悠々と内へ引返して終った。茂左衛門というのは初対面でずるそうな奴だと小吉の睨んだ例の村方の総代だ。
 百姓達は、それから少しの間、暗いところで、ごそ/\ごそ/\何にかやっていたが、いつの間にか、みんな居なくなった。
 その時は小吉はもういつものように肱枕でねころんでいた。
「しかし驚きましたな先生、あの時の一発は」
 と東間が首をふるのへ小吉は
「本所もんは品《ひん》が悪いよ」
 と笑った。
 次の日も村方が大勢寺へ集って、頻りに評議をしているということを代官が小吉へ告げた。
「茂左衛門が音頭取だろう。何にが出来るものか、投ったらかして置け」
「茂左衛門は寺へ行っていないようです」
「狡猾な奴だ。隠れて糸をあやつっているのだ」
「そうでしょうか」
「今夜御覧よ。あ奴ら、この近辺へ来て何にかとこっちに腹を立てさせるような雑音をはくだろう、こっちが怒って刀をぬき誰かに浅疵《あさで》でも負わせたら、そこが付け目、その騒動のごた/\で、申入れた借上金を有耶無耶にして追帰して終うつもり。茂左衛門というは猿智恵だ」
 その晩は、思い出したように、ぼつ/\雨が降ったり、そうかと思うと、真っ黒い空へ星がぱらーっと出たりしたが、小吉が云う通り、次から次と、三、五人ずつやって来ては、大きな声で、小吉一行の悪口をいった。五助が辛抱しきれなくなって飛出して行くと、みんな脱兎のように逃げて終って姿もないという。
「あれらはこの辺で、もう手はないだろう」
「そうでしょうか」
 と堀田は首を曲げて
「これが段々にこうじて一揆のような事にでもなれば、こちらもお咎を受ける事にならぬとも限りませんね。いゝ加減のところで見切りをつけたらどうでしょう」
 と低い声でいった。
「おれは、引込む位ならはじめから出ては来ない」
「でも」
 とこんどはまだ疵痕の生々しい縫箔屋が
「先生、この辺の百姓は案外|悪性《あくしよう》でございます」
 という。
「ふん、悪性がお前のいかさまで銭を捲き上げられるか」
「へえ」
 縫箔屋は、びっくりする程大きくお辞儀をして黙った。
「云って置くが、みんな百姓が怖くなったら江戸へかえっていゝんだよ。おれ一人になってもやるつもりの事はやって行くから」
 じろりと一人々々の顔を見廻して行く小吉は微笑はしているが、怖かった。
 次の日はまた寺へ前の日より多勢集っていると代官が知らせた。
「そうか、東間ついて来い、行って見る。お、五助、荷の中から御紋服を出せ。百姓らに葵の御紋を拝ませてやる」
 小普請でも徳川《とくせん》の御家人《ごけにん》だ。小吉のところは御紋服を拝領してある。何にかの際にはと思ってこれを持参してこっちへ着いてから新しい行李に入れて床の間に置いたが今日はじめて着た。直径《さしわたし》三寸の余もあるびっくりする程大きな葵の五つ紋である。
 羽織は着ず、この袷の姿。白っぽい袴をつけ、五助に髷もきっちり結い直させて小吉は東間一人を供に肩を張って出て行った。
「次第では斬ってもいゝですか」
 と東間がそっときく。
「馬鹿をぬかせ」
 小吉はぷつっとそういった。
 昨夜の雨のためか、寺迄の道は少し悪かったが、お天気がいゝので暖かかったし、遠い山々も、野っ原も洗ったように綺麗であった。
 寺は知っている。その前方《まえかた》に森があって、葉色が少し焦茶に見える杉の並木道が、だいぶ長い間つゞいている。
 寺の本堂の外にも、二、三人ずつかたまった幾組かの百姓がいる位だから、ずいぶん人数は集っているのだろう。
 小吉は真っ正面を向いて、反り加減に手をふって大股に歩いて行く。東間は、小吉の着ている御紋服がまことに恐れ多いというような風《ふう》を装って、少し腰をかゞめて直ぐうしろに従った。
 寺の門を潜るとみんなこれを見た。俄かに汀に波の寄せるようなざわめきが起きたと思うと、忽ちそれが人の渦を巻いた。
 小吉はその辺に人の居る事などは目にも入らぬという態で正面《しようめん》切ってどん/\本堂へ近づいて行く。
 百姓達は、ばら/\ばら/\先きを争って蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。庫裡へ駈込む者もあれば、裏手の竹林へ飛込んで行く者もある。が、本堂へ入ると、奥の方に茂左衛門がたった一人落着き払って目玉をぎょろ/\させて坐っていて、じろりッと入って来た小吉を見上げた。小吉は突立ったまゝで、いきなり叩きつけるような凄い大きな声で
「百姓、頭《ず》が高いッ」
 と怒鳴りつけた。
 茂左衛門は流石に動悸っとした。
「土百姓奴、三つ葉葵の御紋服が目に入らぬか」
「は、はっ」
 このひとことで茂左衛門は一度がくんとのけ反って今度はぱっとうつ伏したが、もう口も利けなくなった。
「御紋服に無礼の段、許さぬぞ」
「お、お、お待ち下され、お許し下され」
 がく/\しながらやっと畳へ肱でからだを支え慄え声で手を合せた。
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