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父子鷹43

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:気絶 東間は軽蔑の含み声で「わかった、今度は断られて咬みつかれでもしたのだろう、態《ざま》を見ろ」 と面白そうに手を打っ
(单词翻译:双击或拖选)
 気絶
 
 東間は軽蔑の含み声で
「わかった、今度は断られて咬みつかれでもしたのだろう、態《ざま》を見ろ」
 と面白そうに手を打った。
「黙ってきけ」
 小吉は横を向いていう。
「東間さんのおっしゃる通り、目に角立てて、じいーっと睨みつけてね。こっちの腹へしみるような声でこういった——わたしが亭主のある身で不義をしたのは唯々亭主が近頃こっている富籤を取らせてやりたい、喜ばせてやりたい、そういう切《せつ》ない心があったからだ、それをまたぞろ不義を仕掛けるなどは、不届千万な坊主奴が——と、瞳をうるませて睨んだ蛇のような目つきの怖ろしかった事、それにその声が、前とは違ってまるでこの世の物ではなかったのですよ。それからというものは、いつも、この女の眼とその声がわたくしに付いていて離れない。難行苦行をする身が、じり/\じり/\この姿に追い廻されましてな。終いには往来を歩いていると向うから、女がやって来る、ひょいと見ると、あの女だ、女という女があの時の形相の物凄い女の顔になってこっちの五体がだん/\縮んで終うんです」
「当たり前だねえ」
 と東間はしかめッ面で
「怖ろしい女の執念という奴だな」
「はい。それからはこっちはからだは衰える一方、祈祷もまるで当らなくなって終いました。もし勝先生」
 と喜仙院は小吉へ向って
「生霊が祟るなどという事はないと思いますが、詰り自分の心に咎める所があれば、何んとなく気息が絶えて来る。それで鬼神と共に働くところの、人間の至誠というものが乏しくなって参るのではございますまいか。わたくしは、こう、衰え果て、貧の底に落ち、その日の食は元より、雨露を凌ぐところさえない乞食のようになって、はじめて、人間は平生踏み歩く処の筋道が大切だと悟りました」
 小吉は
「有難う」
 と、一寸頭を下げて
「お前の話でおれも大いに悟るところがあった」
 といった。喜仙院は
「しかしわたくしはすでに気がついた時は遅かった。年も年なり、所詮は淋しく餓死を待つばかりです。たゞ、今にして先生へこの胸中を残らずお話しして死に得るのはせめてもの幸福《しあわせ》でありました」
 とはじめて、にこっとした。
 泥鰌屋を出た。外は冷めたい風が少し吹いていた。小吉は出しぬけに
「おい、喜仙院、お前、それだけの悟道を得ているのだ。も一度、はじめから祈祷の修行をやり直せ。東間がところに宿借りして、先ずあの平川右金吾の病気平癒を祈るのだ。それには苦行難行もしなくてはなるまいから、そんなからだではとても持たねえ。当分うめえ物をくらって養生をするのだ。銭はおれが工面をしてやる」
「せ、せ、先生」
 喜仙院は取りすがった。
「お前は今至誠は鬼神をも動かすといったが、お前が踏出して再び元へ戻って行ったら、今度こそ本当の神通力だ。おれはその日を待ってやる」
 小吉は今度は東間へ
「そのつもりで面倒を見てやれ」
 喜仙院は、地べたへ膝がしらをついて、小吉へ手を合せた。
 小吉が何んだか、いゝ事をしたようなものを抱いて屋敷へ帰ったら、お信から
「お留守中に、堀田さんが見えていました」
 ときいたが
「あ奴、何にかというと用人をやめさせて呉れという。困った奴よ。また其の事だろう」
 と、気にもかけぬようにしてねて終った。
 次の朝、ぱら/\と霰交りの粉雪が降った。積るという程ではなかったが、白粉をまいたようなところが、ところ/″\に出来た。
 その為めか小吉が他行留の間にいじり廻した庭が、ちょいと風情がある。縁の障子を開けて、どっかと坐って、莨を吸い乍ら
「お信どうだ、こうなると、おれが庭も満更じゃあねえね」
「さようで御座いますか」
「おや、気のねえ返事だねえ」
 お信が笑いながら茶を出した。石灯籠の下の万両の紅い実が粉雪をかついで美しかった。
 男谷精一郎と島田虎之助が、連立ってやって来たのは、小吉が茶一服を喫し終らない中であった。島田がこゝへ来たのははじめてである。
 あの時は、あれ程島田をおもちゃにして遊んだ小吉も、今は流石にびっくりして、お信へは急《せ》わしく何にかと云いつけて、自分は羽織を着て玄関へ出て行った。
「これは/\」
 島田は鄭重に頭を下げて
「その砌は有難うございました」
 といった。
「いや、あの事は水に流して貰いたいよ。赤面汗顔。さあ、どうぞ上って下さい」
 と、今度は精一郎へ
「おのしは非番かえ」
「は、そうです。実はゆうべ島田が道場へ泊りましてね。いろ/\相談の結果、参りました」
 小吉はすでにぴーんと来た。
「あの腕白奴、物にはならないか」
 虎之助黙って、眼をぱち/\したが、精一郎は
「いや、物にならないどころではない。まあ島田が申すところをきいて下さい」
 と笑った。
「ほう」
「実は昨日」
 と虎之助は、きっと膝を揃えた。お信が茶をもって来る。精一郎は静かにそれを喫し、今度は島田へ出たが、些か閉口の顔をした。
「がぶりと頂戴すれば宜しいのだ。作法も何にもない。ね、叔父上、それでいゝのですね」
 と精一郎に云われて小吉は大声で笑って
「兄上がよく口癖にいう千利休の悟道の歌よ。茶の湯とは唯湯をわかし茶をたててのむばかりなる事と知るべし。はっ/\/\、あれでいゝのよ。茶ばかりではない、剣術もな」
「はあ」
 虎之助は一礼して
「麟太郎と唯二人きり、道場に出て手合を致しました。わたくしに多少の考えがあり、力任せに打ち、力任せに突き、さん/″\な目に逢わせましたところ、遂に麟太郎はあえぎ乍ら組みついて参ったのです」
「へーえ、小僧が」
 小吉はぐうーっと首を前へ出して、またゝきもしない。
「わたくしは、これをまた力一ぱいに道場へ投げつけましたところ、麟太郎は、そのまゝ気絶を致しました」
「ふむ、だらしのねえ——」
 小吉は少し頬をゆがめて呟いた。虎之助は
「わたくしは、面をとり抱きかゝえて活《かつ》を入れたのです」
 といった。
 小吉はからだをせり出した。そして虎之助の言葉が切れるか切れないに
「あ奴、何んと云った?」
 それがまるで剣術の気合のような烈しいものであった。精一郎も虎之助も、その突込みに打たれて、些かの間、呼吸が詰った。
「はあ」
 と間をおいて虎之助は
「正気づくと共に、麟太郎は、にっこり笑いました」
「笑ったか」
「そして、先生、わたくしの死相はどうでしたろうとたずねました」
「死相をきいたか」
 三人はそれから少しの間、無言をつゞけた。
 小吉はやっとほぐれて
「精一郎、あ奴はとんと強情だねえ」
 といった。
「はっ/\は。叔父上はとっくに解っていられながらあんな事をおっしゃる。叔父上、島田もそう申すのです。この上、もうわれ/\が竹刀をとって教うべき何ものもない、麟太郎はすでに極意に突入している。わたくしにしても島田にしても、呼吸を吹返すと共に、わたくしの死相はどうでしたと、先ず第一にそれをたずねる程出来ているかどうか。自ら省みて甚だ疑わしい」
「それは買いかぶったよ、あ奴は唯の強情だよ。本当だよ」
「いゝえ、そんな事はない」
「禅も修行いたし、剣もこゝ迄来たら、もう、お前へけえすと云う訳かえ」
「そうではありません——わたくしも島田も麟太郎には、この上は専心、学問をさせようではないかと相談をきめたのです」
「学問ねえ」
「阿蘭陀です。間もなく日本は阿蘭陀の学問に風靡される。麟太郎に、その時に風雲に乗じて立つ用意をさせたい。叔父上、麟太郎を唯の剣術遣いにしては勿体ないと思います」
「ふーむ」
「日本国は空には、すでに唯ならぬ風が吹いている。是非、わたくし共の説くところに賛成して下さい」
 おだやかだが精一郎の語気には強い信念があった。小吉は
「お前が——」
 と云いかけて、急に
「おのしが——」
 と改めて
「そう云うなら、文盲のおれに文句はないが、阿蘭陀は誰に教わるえ。新しいのを鼻先へぶら下げて、ずいぶん嫌味な奴もいるというではないか」
「それも島田と相談して見ました」
 虎之助が、にこりともせずにいう。
「当時江戸市中蘭医蘭学の師は八十余人ありますが先ず湯島の箕作阮甫先生、津山侯松平三河守様の侍医です。近く大公儀の天文台訳員に補せられるやに聞及びます。宇田川榛斎先生の門より出でて、いよ/\深く猥りに人に許さないところがあって人物が面白いとききました」
「そうか。近頃の江戸はてめえを売込んで広めようという奴が多くてねえ。おのしら、おれが麟太郎を買いかぶったように、一ぺえ喰わされているのではないか」
「そんな事はありません」
「では麟太郎をそこへやるか」
「それをお願いに参った次第です」
「じゃあ、あ奴、家へけえって来るね。はっ/\は、あ奴、とう/\おのしらに持て余されたか」
 精一郎も虎之助も、それは飛んだ思い違いである、われ/\は唯、麟太郎に、学問をさせたい一心で、こういう事を考えたのだと、むきになって弁解する。何あに、小吉にも、そんな事はとっくに合点がいった。が、口先きでは別な事を云っているのである。
 その晩、麟太郎が入江町へ帰って来た。お信は少しの間でも、他人の飯を喰ったためか、何にかしら、滅法大人びて来たような気持がして、そっと肩の辺りを撫でて見たりした。
「おい、いつからその箕作てえのへ行くのだ」
 小吉は腹んばいになっていた。軒にさら/\と微かな音がする。また小雪でも降っているのかも知れない。
「明朝から参ります」
「ほう」
 と小吉は、頬をふくらませて、それを軽ろく叩き乍ら
「阿蘭陀もいゝが、どうにも寝言《ねごと》のようなものだねえ」
「そうでしょうか」
「堀田がいつか真似をしていたよ」
 お信は、ちらっと麟太郎の着物の肩の辺りが破れているのに気がついた。が、そのまゝ黙って
「明朝というなら、もうおやすみなされ」
 そう麟太郎へ云った。
 麟太郎がねたら小吉は小さな声でお信へさゝやいた。
「もうお正月だ。年が明けてからと思っていたら、明日からとは驚いたね」
「着物も破れて居りますし——」
「おれが外着《そとぎ》を早えところ縫い直しておやりな」
「はい。それでは明日|市《いち》へ参りますに、あなたがお困りなさいましょう」
「いゝよ、明日はまた明日の風が吹く、何んとかなるよ」
「よろしゅうございますか」
「もう夜も深けえにすまねえが、お信、そうしてやってくれ」
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