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父子鷹56

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:七転《なゝころび》 世話役三人は一艘の舟。芸者が三人乗って、向う川岸まで送る。一艘には大館と金子上が乗った。が金子上がま
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 七転《なゝころび》
 
 世話役三人は一艘の舟。芸者が三人乗って、向う川岸まで送る。一艘には大館と金子上が乗った。が金子上がまたひょろ/\と上って来て
「勝どの」
 と耳元へ口を寄せて
「上役方をお送りしてから、もう一度飲み直そう、大館さんも飲み足らんといっている」
 唇を少し曲げた。
「は」
 と小吉は彦四郎の方を見た。彦四郎は月を見るような恰好でそっぽを向いている。金子上はそのまゝ再び舟へ戻ったが舟を出させない。世話役達の舟は、賑やかな笑い声を積んで、大川へ出て行った。
「これからがわれ/\の天下さ」
 と金子上は大館の手を引っ張るようにして陸へ上った。
「小吉、女共と共に摩利支天横町の若戸へ行ってお取持をしろ」
 彦四郎はそう早口にいって
「皆々、どうぞごゆるりと」
 次の言葉が終るか終らぬに、もう、くるりと背中を向けていた。
 若戸は座敷の前がすぐ川で、積み上げた川岸の石垣の上は、ほんの四つ石垣、小さな舟が上ったり下ったりするのが、庭の池の中を漕いででもいるようによく見える。
 上座に二人並んで、芸者の酌を受けながら
「どうだ勝どの」
 と大館がいやに耳につく甲高い声で舌なめずりをしながら
「さっきから見ていると、ちっとも飲まんが、一つ、わしの盃を受けて貰おうか」
「誠に御無礼ながら 勝は一盞もお流れのいたゞけない不重宝者です」
「そんな事はあるまい、人間、男と生れて酒を飲めんという事はない」
 金子上がこれにつゞけた。
「そうだとも。おのしは、何にかわれ/\に気の喰わんところがあるのだな。さっきから、われわれを見る眼がそう云っている。それ位の見分けがつかんで御代官の手付がつとまるとでも思っているのか」
「とんでもございません」
「われ/\は人の心を読む事を知っているのだよ」
 と大館。
「第一、代官所の役人は、黙っていても金の方からひとりで飛込んで来るように役得のあるものだ。これからはいくらでも金の儲かる役につくというのに、今夜の取持は少々けち/\しているではないか」
 そういい乍ら、ふところから、さっき彦四郎から貰った金包を出して、掌へのせて、ひょいひょいと弄《もてあそ》んだ。
 小吉の頬の色が少し変っている。じっと金子上から眼を離さない。女達はみんな気の毒そうにうつむいた。粋が揃った辰巳の芸者、内心では唾でも吐きたい気持だろう。
「第一、おのしの父上は名代な分限者《ぶげんじや》、祖父どのは盲目の身で、越後|小千谷《おじや》から出府して僅か三百文のもとでを、遂には水戸藩へ貸しただけでも七十余万両、江戸御府内に十七ヵ所も地所を持ったという男谷|検校《けんぎよう》。父御の平蔵どのはその九人の子の末子だそうじゃが、世間では五万両の遺産を貰うたといっている。はっ/\/\。只で祖父どのから貰った金だ。もっと器用に使ってもよかろうにな」
「正にその通り」
 大館もにや/\しながら
「噂では検校は死ぬ時に、伜共へ三十万両の現金《けんきん》を残し、烏金で貸してあった証文は悉く灰にしたという。金はこういう風に扱うものだな」
「それはともかく、勝どの、おのし、文字が書けぬそうではないか」
 と金子上。
「は?」
「御支配へ日勤の記帳の文字がまるで五つ六つの子供のようだと噂がある。代官所の役人は、それではちと面倒ではないか」
「お恥しい次第でございます」
「まあいゝ、まあいゝ」
 と大館は
「そんな野暮な話は止しにしろ。それより、わしは蕎麦が喰いとうなった。酒をのむと蕎麦を喰いたくなる癖があってな。勝どの、頼む」
「はい。承りました」
 女達が気をきかせて立ち上ろうとする。大館はじろりとこれを見て
「こら女ども——蕎麦を喰いたいといっても、おれのは並の喰い方とは違うぞ。うで立てを水洗いしてすぐにそこで喰べるのだ。深川の名物は熊井町の翁蕎麦。あれをうで釜ごとこゝへ持って来るのだ」
「はい?」
「わからんか、翁蕎麦をこの庭先へ引越しさせて来るのだ。それでなくては、うで立ては喰えん」
 女達は目をぱち/\して、みんな腰を畳へ落して終った。
「と、と、殿様、そのようなことを仰せられましても——」
 少し年とった女が小さな声でそういった。
「いや、並の者には出来ん。が、油堀の分限者男谷平蔵殿を父上に持たれる勝どのなら、いと易い事なのだ。なあ、勝どの」
 顎を突出すようにしていう大館へ、小吉は不意にずばッと膝を寄せて行った。
 血相が変っている。息を詰めて肩が微かに上下したと思うと、にやッと笑ってその途端に小吉の手が大館の襟へかゝった。
「な、な、何にをする」
 流石に狼狽した。
「ぶ、ぶ、無礼」
 金子上は睨みつけて威喝するように大声でそういい乍らも、半ば逃げ腰で座を立った。小吉も大館を吊し上げるように引立てて同時にすっと立った。そして右の手は金子上の胸を鷲づかみにしていた。
「な、な、何にをする」
「無礼千万」
 二人の声は同時に織りなしたが、小吉はこの二人をずる/\と引きずって跣足のまゝ庭へ下りた。さっきからの気配にはら/\していた女達は、真っ蒼になって、何んにも出来ない。出来ないどころか声も出ない。ぺったりと坐ったまゝのものもいる。
 庭の中程へ来た。月が照って、何処かで三味の音につれて、河東節が聞こえている。
「か、か、勝どの、い、い、いや勝さん、みんな酒興ですよ。あ、あ、あんな事に腹を立てる事あ御座らんでしょう」
 と金子上。
「そ、そうだよ、か、か、勝さん、これからは同じ釜の御飯をいたゞかなくちゃあならん間柄だ。何にか気にさわったら謝るよ。いやもう宵からの到れり尽せりの鄭重な御馳走で、腹の底まで酔ってるもんだから——自分でしゃべった事を、もう、みんな自分で忘れている始末だ。お、お、おのし——い、いやあなたが、そう立腹された訳がわからんよ。まあ、謝る。勘弁して下され」
 大館の声は跡切れ/\に慄えていた。
 小吉は無言。
 金子上が不意に
「やッ!」
 と気合をかけると、脇差を抜き放った。
「あ、あ、危い金子上」
 叫ぶ大館にかまわず、金子上はその脇差で小吉の横腹へ斬りつけるつもりだったらしい。
 が、斬るどころかその脇差を持ったまゝ、宙に大きく輪をかいて、庭石の前へ実に無態《ぶざま》に力一ぱいに投げつけられて終っていた。地へめり込むようにぐうーと強い声でいった。がそのまゝもう、びくりとも身動きもしない。
「か、か、勝さん、勘弁して下され、座興が一寸すぎたのだ、悪意はない、悪意は——」
 大館の金切声を小吉はやっぱり無言である。
 ずる/\と、川ッぷち迄引っ張って行った。
「こ、こ、これ勝さん、あ、あ、あなた、そんな乱暴をしてそれでいゝのか。御番入に差支は出来やせんか。え、勝さん」
 物凄い水音がした。大館は毬のように無造作に川へ投込まれた。小吉はじっと川面を見ている。沈んだ対手がやっと顔を水面へ出した時は、もう元結が切れてさんばら髪で、烈しく両手をばちゃ/\させているのは泳ぎを知らないのだろう。
 小吉は平気でこれを見下ろしている。
「助けて、助けて下され——勝さん、詫る、詫る」
 小吉は悠々と座敷の方へ引返した。ちらッと見ると、金子上は元のところに仰向けになったままで、口の中まで月の光がさし込んでいる。
 座敷の内は蟻のように大勢の人達が集って、わい/\わい/\耳を裂く程のやかましさになっていた。
「騒がせてすまなかったな。御免」
 小吉はこの時はじめて、ぷつりと物をいって、自然に両側に片寄った人と人との間を、全く、何事もなかったような平気な顔つきで、玄関口の方へやって行った。
 それでも女将だけが流石に落ちついて、刀を出した。それを受取りながら、
「明日、男谷の用人利平治というが来やンすからね」
 にこッとして、頭を下げて、出してあった雪駄を突っかけると、静かな足どりで悠々と門を出て行った。
 こゝから油堀まではいくらもない。丁度八幡宮の一の鳥居をくゞって八幡橋まで来たところへ、あわてて彦四郎と用人利平治、それに仲間二人が駈けて来るのと、ばったり逢った。
「こ、こ、この愚か者奴、大変な事をやったそうだな」
 彦四郎は息切れているし、吃ってもいる。
「はあ」
 そういう小吉の頬へ彦四郎の平手が力一ぱい飛んだ。
「何にが、はあだ、この大馬鹿奴。これで何にもかももうお終いだ」
「はい、わたしもそう思います」
「何にをッ」
 また彦四郎の手が小吉の頬に凄い程の音を立てた。
「大金を費い、しかもあんな者共に、男谷彦四郎ともあるものが、七重の膝を八重に折ったのは誰の為めだ。ば、馬鹿!」
 また頬が鳴った。
「おのれ、屋敷へ帰って謹慎をしておれ、一応の片をつけてわしも直ぐに戻るから」
 と彦四郎は少し駈け出したが、ふと気がついてか、あわてて引返して
「利平治、お前、こ奴を逃がさぬように見張って行け。万にも一つ逃がしたら、腹じゃぞ、腹を切らせるぞ」
「は、はい、はい」
 利平治は泣いていた。そして小吉の袖をつかむと
「さ、戻りましょう」
 と聞こえない程の声でいった。料亭若戸の事件はすぐに若い者が油堀へ飛んで行ったので忽ち知れたのだ。
「小吉様、小吉様」
 利平治はうしろから小吉にすがりつくようにしては道々声を上げて泣きつゞけた。
「利平治泣くな。人間にはな、辛抱の出来る事と、どうしてもそれの出来ない事があるものだよ」
 小吉もほろりとしている。瞼に父平蔵のがっくりとした顔が浮かんだからだ。
 油堀では、お信が女中と門の外へ出て待っていた。
「だ、だ、旦那様」
 泣く声へ
「すまないことをして終った。お前にばかり苦労をかけるが」
 そういって
「父上へお詫をする。お前も来てくれ」
 若い夫婦が揃って、手をついているのを平蔵も泣き乍ら見下ろしていたが、やがて少し笑顔になって
「いゝさ、お前の好まぬ御番入をみんなでやい/\押しつけたが、悪かったかも知れぬ。人はみな七転八起《なゝころびやおき》。小吉、唯お前の一生を元気でやれ」
 といった。
 この時であった。離れの小吉の家の女中が、小膝で縁側の板を割るような響きをさせてあわてて廊下へ手をついた。
「あ、あの——」
 はあ/\息をはずませて眼をぱち/\している。
「何んだ」
「あ、あ、あの」
 利平治が来た。
「大変でござります。御|祖母《ばゞ》様が玄関で俄かにお倒れなされました」
「何? 御祖母様が」
 小吉とお信は、父へ一礼するとそっちへ飛んで行った。御祖母様は玄関の大きな沓ぬぎ石へ、うつ伏せになってもう息もない人のようである。
 すぐ医者も来た。が、祖母の脈の止ったのはその夜の|四つ上の刻《じゆうじ》、きっちりであった。医者は卒中だといった。
 彦四郎が帰って来た時はもう|子の下刻《ごぜんいちじ》で、利平治がこの話をしたが耳にも入れず
「小吉ッ!」
 大きな声で怒鳴りつけた。眼が血走って頬は蒼く、唇もかさ/\に乾いていた。
「お前に庭石へ投げつけられた金子上は脾腹が破れて無慚な即死だぞッ!」
「え? し、し、死にましたか」
「貴様、とう/\人を殺した。か、か、覚悟はいゝな」
「はい。固よりで御座います」
 
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