皆さん。
今日、この快晴の日、ほかならぬ皆さんのグループ「白|薔薇《ばら》会」にお招き頂き美しい皆さんとテーブルを共にし、狐狸庵《こりあん》、寿命ものびる心地で……。厚く御礼、申し上げる次第であります。(ト一礼)
会長の鼻高夫人から食後、なにか話をせよとの御命令でありましたが、御存知のように拙者《やつがれ》、七年前より、世をいといまして、柿生《かきお》と申す山里に草庵をあみ、昼は経を読み、夜は庵《いおり》とりまく林を吹く風に耳傾けるという文字通り、世捨人の生活を送っております身ゆえ、とてもとても皆さまのお相手などできません。で、鼻高夫人にも再三話だけはと、固辞したのでありまするが、お許し下さらんのであります。
会長夫人に伺いますと、皆さん「白薔薇会」のメンバーは月一回、集まられて、あるいは読書会を作られ、料理講習会も開かれ、美容のために卵と蜂蜜をまぜたものを顔面に塗られ、あるいは他のグループの悪口を言いあい、おのが亭主の学歴地位を巧みに誇るなど、その活動も多岐にわたり、さすが教養ある近代婦人のグループだと拙者、しみじみ感動したのでありまするが、とりわけ、「うちの会にはお姑さん、若いお嫁さんも随分おられますが、どの方も優しいお姑さん、いいお嫁さんのカップルで、お仲のいいことには感心させられますワ」
というお話には、深く考えさせられるものがありました。そこで今日はこういう機会を利用して、嫁と姑との関係について、拙者、平生から考えている愚見の一端をしゃべらせて頂きたいと思います。(ト一礼。拍手)