姑と嫁との関係——これは既に嫁をおもちの方にも、現在、嫁の立場にある方にも、また近い将来、お嫁にいかれるお嬢さまたちにも大きな問題であります。姑と嫁との関係はいかにあるべきかは日本のように家族制度が何らかの形で今日なお残っている社会では、女性が必ず考察せねばならん課題だと思うております。
そのためか、ここ数年来、巷間の婦人雑誌などをツレヅレなるままにめくりますと、「やさしい嫁をもった私の幸福、山田ウメ(六十一歳)」とか「理解あるお姑《かあ》さまと御一緒に、木村トメ子(二十七歳)」というような告白手記が必ずや一つか二つは掲載されているのでありまして、それらには、この「白薔薇会」のメンバーの方たちのように仲むつまじげな姑と嫁との情愛が語られております。
「長男一郎に嫁がまいりましたのは今から四年前でございますが、わたしたちの間には今日まで口争《いさか》い一つ起ったことがございません。嫁は私のことをまるで実母のようだなどと申し、ママ、ママ、と何でも相談してくれます。私も私で息子夫婦にできるだけ邪魔にならぬように努め、ただ何か相談をうけた時だけ、長年の人生経験による考えを申しのべるのでございます」(山田ウメ)
「うちのお姑《かあ》さまは年は六十五歳ですが、まるで娘と同じで、あたしの一番いい相談相手です。時々、お茶をのみながら、これじゃア、どっちが本当の子供かわからないワネなどと夫とあたしの顔をみくらべながら、おっしゃいます。今日までお姑《かあ》さまが他の御家庭にあるように夫婦の寝室の音に聞き耳をおたてになったり、あたしの食事がマズいなどと茶碗をひっくりかえされたことは一度もありません。若い人たちには最近、ババぬきなどという言葉がはやっているようですが、あたしにはとてもそんなことは考えられません」(木村トメ子)
こうしたうつくしげな手記は拙者が今更御紹介しなくてもみなさま、既にお読みになったことがあると思います。(一同深クウナズク)