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ぐうたら愛情学22

时间: 2020-10-10    进入日语论坛
核心提示:1 女の「強さ」とは すべてが同等であり得るか 執筆者と読者の関係なんてツマらねえな。大体、執筆者なんて高いところから悟
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1 女の「強さ」とは
 
 すべてが同等であり得るか
 執筆者と読者の関係なんてツマらねえな。大体、執筆者なんて高いところから悟りすましたような良識でものを言うね。大説をのべるもんです。
 大きな説なんかぼくア、恥ずかしくって言えないんだよ。みんなと同じようにアレコレ人生に迷っとるんです。せいぜい小声で小さな説をのべるが力一杯。だから小説家って言うんだ。
 こっちにいらっしゃいよ。悪いことしないから。遠藤周作いい男。あなたの恋人や御主人と同じくらい、いい男。コワくない。コワくない。一緒にストーブのそばで蜜柑《みかん》でもたべながらだべろうよ。
 しかし何、話そうかなあ。
 ずっと昔、ぼくにガール・フレンドがいた。ぼくだってガール・フレンドぐらいいましたよ。あなたと同じほど綺麗《きれい》でした。でもないかな。ある出版社の編集部に勤めていてね。この娘。
 その娘がデイトのたびに会社での不平言うんです。男性社員の悪口言うんです。
 当時、猫も杓子も阿呆《あほう》の一つ憶《おぼ》えのように、「封建主義」とか「反動」とか昔のこと、古いしきたりを非難している頃でね、彼女もよくその言葉を使っていたなあ。
「うちの会社ってすごく封建的なのよ。本当に嫌になっちゃう」
「なぜさ」
「まア聞いて頂戴《ちようだい》よ、こんなことってある。初任給からして男と女は違うでしょ。それは学歴が違うからしてまあ、いいとしても、女の子は出勤すると、すぐみんなの机の上なんか片付けたり、そこらを掃除させられるのよ。男の人はそんなことしなくてもいいの」
「ふうん」
「お客さんが来たらお茶を出すのはあたしたち女の子の仕事だし……それに編集会議だってほとんど男の人たちでやっちゃうの」
「なるほどねえ」
「あたしがね、一番|口惜《くや》しいことはうちの会社じゃ、女はチョウになれないことなのよ」
「チョウ? チョウって蛾《が》や蝶のチョウか」
「あんた馬鹿じゃない? チョウっていうのは編集長や課長のことよ。あたし仕事じゃ男の人には絶対、負けないつもりなんだけど、それでもいくら勤めたって長にはなれないのよ。不公平だと思わない。男と女と能力に違いはない筈よ。あたしたちのお母さんの時代は別だけど、今のあたしたちは決して男に負けないんですから。こんな差別待遇って、ひどく前近代的だと思うわ」
「ああ」
「ああ[#「ああ」に傍点]って、あなた、私の言う通りだと思わない。あなたも、うちの会社の男たちと同じように封建的な考えの持主じゃないんでしょうね。男女平等を認めるんでしょうね」
 当時、ぼくはその娘に多少、心が動いていたからね、相手の機嫌を損じたくなかったし、それに若いくせに古いって言われるのがコワかったからうなずきましたよ。そうだ、そうだって。君の会社の男たちは横暴だ。ひどい。現代男性の風上《かざかみ》にもおけないって。
 「女らしさ」の行き場所
 しかしこの娘、ヘンな奴だったなあ。この議論のあとで、たとえば喫茶店にいく、何かを食べにいく。そして勘定の時になると、さっさと自分だけ先に出て、金はぼくに払わしたもんです。それも一度や二度じゃないよ。毎度ですからね。
 大きい声では言えないが、男ってのはもともとケチでね。娘とデートの時、奢《おご》るのはあれは虚栄心からですよ。そしてぼくア、虚栄心って奴があまり好きじゃないからさ、言ってやったんだ。
「なぜ喫茶店やレストランで男の俺ばかり払わなきゃあ、いけないんだ」
「まア」
 彼女は眼を丸くしてビックリしたような蔑《さげす》むような口調で教えてくれましたよ。
「あなた、野蛮人ね、女は弱いんですよ。だから男は女を大切にするのが当り前なのよ。女に払わすなんて、最低の男なのよ」
 ぼくは黙っていた。黙っていたが心の中で、何言ってやがんだい。いい気になるな、世の中に甘ったれやがって。真実そう思いましたな。
 だって、あんた、そうじゃないか。彼女はさっき男と女は平等であるべきだ。男に女は決して負けない。そう言ってたんだ。
 それがさ、平等である女が男にケーキ代、珈琲《コーヒー》代を払わして、「女はか弱いんだから、いたわれ」とこう、きやがる。平等ならば、喫茶店に入った時、男と女は割カンでいけばいいじゃないか。少なくとも二回に一回ぐらい払えばいいじゃないか。
 都合のいい時は男女平等、都合わるい時は「か弱い女」、これじゃあ、オテントさまだって泣くわいな。あんまり虫がよすぎますわいな、そうぼくは心中、考えた。考えたけど言いませんでしたよ。言えば、ハジキ豆のように叫びはじめるですからね、彼女は。
 世間が冷たいのか……
 それから十数年。ぼくも大人になりました。時々、あのガール・フレンドのことをふっと考える。今頃、いい女房になっていることでしょう。子供の二、三人もあることでしょう。
 しかしだ。彼女の不平は今でも耳に残っている。うちの会社じゃ男ばかりを大切にする。その不平はあの頃の彼女と同じような娘さんたちにぼくは今でもよく聞かされますよ。
 でもねえ、もし、ぼくがその会社の重役だったら、社員だったら、女の子を男性と同じ待遇にはしない。今ならもうガール・フレンドがコワくないから、そうハッキリ言えるような気がする。女性読者、怒った? 怒ったのなら、ぼくに抗議状、送って下され。無記名はイヤだよ。ちゃんと名前と住所を書いてね。
 なぜかって。当り前でしょ。女の子の大半は(現状のところ[#「現状のところ」に傍点])その九十九パーセントまでがお嫁にいく。途中で会社をやめる。いいかえれば会社と一生、運命を共にはせぬ存在だ。
 ぼくがその会社の社員なら、一生、会社に自分を賭けようと思うよ。そういうぼくに、途中で会社をやめるような女の子に同僚意識を持てるかい。友情をもてるかい。腹の底うちわって語りあおうと思うかい。思う筈がないですよ。
 ぼくがその会社の重役なら、会社を途中でやめるときまっているか、その可能性のある女子社員に重大な仕事を委せられるかい。教育しようと思うかい。自分の片腕として何かを託す気になるかい。ならんですよ。
 あなたがもし男なら、ぼくのこの理屈はハッキリわかる筈です。世の中なんて、そんなに甘くないですからね。
 まあ、そんなこたア、どうでもいいことだ。要するにぼくの言わんとするのは、戦後の男女同権、あれを女性は実に、なめて、考えてきましたね。少なくともあの同権論を本気で噛みしめようともせず、世の中に甘ったれたんではないのかな。都合のいい時は同権、都合がわるい時はか弱い女に早変り、ぼくのガール・フレンドのような場合は御愛嬌《ごあいきよう》があるが、御愛嬌じゃ生きてはいけませんからな。
「戦後、強くなったのは女と靴下だ」なんて男がよく言いますが、あれほど女をなめた言葉はありませんや。正直言いましょう。女は全然、強くなってませんよ。靴下も強くはならなかったけど。
 近頃、女子学生がどこの会社からもシメ出されるでしょう。女子学生はひどいと言って怒るけど、ぼくは思う。あれは女子学生だけの問題じゃない。戦後の日本女性が世間を甘くみた結果だと。読者よ。怒った? 怒ったのなら手紙をおくれ。
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