私がもし生まれ変わるならば、再び男でありたいかそれとも女になった方が得だろうかと、時々、鼻毛を抜きつつ自問自答することである。
女と生まれたならば、トクなことがたくさんある。
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(1) どこかに食事に行ったり遊びに行っても、男に払ってもらえばいい。
(2) 結婚という逃げ場がいつもあるから、職場での仕事に必死にならないでよい。
(3) あんまり勉強しないでも、何とか生きられる。
(4) 都合の悪い時は「わたしは弱い女」といい、都合のいい時は「男女同権よ」と主張できる。
(5) 自分の思想がなくても「男性の封建社会的横暴」というスローガンさえ口にすれば、インテリ女だと見てくれる。
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まだまだ、いろいろあって、そういう利点を考えると、来世、女に生まれ変わっても悪くないナと思う時がある。
だが待てよ。女と生まれて損なことの方も、たくさんあるぞ。
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(1) 月々の生理とかいう、めんどうくさいものがある。
(2) 夜、遅くまで外出すると親にしかられる。
(3) 電車の中でイヤらしい男に体を触られる。
(4) 男のように立ち小便ができない。用便のためには喫茶店などに入ってムダな金を払わなければならぬ。
(5) 毎日毎日、家族の食事のオコンダテを考えなければならぬ。仕事が単調である。
(6) お産が苦しい。
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こう列挙してみると、女より男の方が生きやすい気もしてくる。
だが、私が一番、女はつらいだろうなあと思うのは、男には、許されるだらしなさが、女には許されない点にある。
例えば、ここにフケだらけの男がいるとする。洋服の肩なんかにフケが白く落ちている。
その場合、彼は必ずしも非難されはしない。外国ならいざ知らず、日本では、
「身なりかまわんいい男だ」
そう友人から思われる時が多い。
「わたしが、チャンとしてあげなくちゃ」
会社の隣の席にいる女の子の母性愛をそそるかもしれん。
このように、男がヨレヨレのズボンをはいても、ほころびたワイシャツのそでをしていても、逆にそれが彼の美点に逆用できる場合があるのだ。
だが、女の場合は……。
女の場合はそうはいかない。髪をバサバサにしている女の子は、
「不潔なやつだ」
「女のくせに身だしなみが悪い」
ただ、バカにされ、きらわれるだけである。
男なら立ち小便をして、できるだけ遠くに飛ばすと名誉になる。女なら、もし同じことをすれば、バカかキチガイと思われるだけだ。
そう考えると、女であることは実にシンドイことだと思う。
いつも清潔にしておかねばならぬ。いつも美しさを保たねばならぬ。汚さ、だらしなさ、なれなれしさは、女にとっては絶対的な欠点である。逆にいえば、女は決してだらしなく、汚くあってはならないのだ。男はそういう女を見ると心中、必ず不快感と軽蔑心を感じるものなのである。
女であることは、やっぱりシンドイ。来世は今まで通り男に生まれたい。