第二の飛躍拡大法というのは、ある事柄の一部分を突然飛躍させ、拡大させ、それで理屈をすすめてくるというやり方だ。例をあげてみる。
「また酒を飲んでおそくなってきて。あたしがどんなに心配しているか、わからないんですか。あなたが外でお酒を飲んでいる間、あたしがどろぼうに殺されたっていいんですか。あなたはあたしが一人ポッチでどろぼうにたたかれて苦しんでも平気でお酒を飲んでるような人なのね。そうよ。そうにきまっているわ。あたしはいつか、そんなふうに死んでいくのだわ。死んでお墓にはいっても、あなたはそんな人だからお参りにも来てくれないんでしょう。本当にあたしって不幸だわ」
このムチャクチャな理屈のすすめ方は妻をもった男ならみなヘキエキする一例である。亭主が酒を飲んだことは彼女の中でいつか拡大されてどろぼうに殺される自分、墓にはいった自分にまで飛躍していく。そしてその悲惨な状況がまるで目の前にあるかのごとく彼女たちは泣きだすのだから全く始末が悪い。
こういう女の理屈のすすめ方に夫はどう、対処したらいいのか。男の論理で口論を続けるべきか。それともヒッパたくべきか。答えはノーである。それは火に油をそそぐようなものだ。三浦朱門はこう言っていた。「沈黙するよりしかたがない。相手の口がくたびれるまで待つことだ。聞いているふりをして、他のことを考えていればいい」