もちろん、これに対する、アリキタリの解答は次の二つである。
(1)(白人の夫たちは、女房を尊敬するフェミニストである。中世紀の騎士と貴婦人との関係のように、このフェミニズムはキリスト教によって育てられてきた)
だが、馬鹿を言っちゃいけない。どんな亭主だって結婚一年もすれば、女房をそう毎日も尊敬できなくなってくるはずです。少くとも自分の体力まで消耗して、自分のものとなった女に、ペコペコする阿呆くささには、すぐ気がつく筈である。
(2)(白人は子供の時から女を、か弱いものとして、助ける義務を感じている)
これもバカバカしい話であります。村上兵衛氏がいみじくも言ったように、女は体力的にも男より強靭であります。少くとも家庭において、女房が夫よりカヨワイと信じている夫が世界の国のどこにおろうか。
フランスの男性は、それほど間抜けでないのですから、右の二つの理屈は当然知っているにちがいない。知っていてなお、彼らはなぜ、女房に対して従者や奴隷のようにペコペコするのでありましょう。相手は赤ん坊でもあるまいのに、彼女たちのオーバを着せたりぬがせたりするのでありましょう。これは、単なる礼儀上の問題だけではないように、ぼくにはだんだん思われてきた。
よし、ではこの理由をフランス人の亭主族からひそかに聞きだしてやろう。始めはうちあけないかも知れぬが、同じ男の間柄として、あるいは心の底を洩らすかも知れぬと、そう考えたのであります。
そして、ある雨の日、ぼくは結婚して二年目の友人をパレ・ロワイヤル近くのアパートに、たずねていきました。