外人たちは、なぜあれほど女房にサービスのかぎりを尽せるのか、なぜ下男か奴隷のように、公衆の面前でも彼女の身のまわりの世話ができるのか。パンを獲《え》んがための涙ぐましい一日の労働のあとも、劇場やパーティで、彼女たちの御機嫌をとりむすぶ体力とエネルギイとは一体どこから出てくるのか。
これは外国に来た日本亭主族が、なによりも驚きをもって発見する事実であります。
幸いにして、われわれの祖国日本では、亭主族はまだ最後のトリデを辛うじて保守している。友人や知人の前で女房に外套を着せたり、靴のヒモをむすんでやる必要は毛頭ない。そんなことを敢えてする連中は、キザな野郎と悪口を言われます。逆に女房こそ(少くとも公衆の前では)、われわれ亭主にオーバをかけるべきだと思っている。