だから、われわれ日本の男性には、外国において、外人亭主のサービスが、一種キザな女々しいもののように眼にうつるのは当然のことでありましょう。
そこで、ぼくは外人亭主の心理を知りたかった。奴ら本気であのサービスをやっているのであるか。なぜ団結してこんな悪習(?)を排除しないのであるか。それほど彼らは女をおそれ、あるいは女を尊敬しているのであるか。
「ふん、ふん、ふん、ふん」
東洋の友人の、このふかい懐疑に、むかし、留学時代の仲間であり、現在、パリで電気器具の販売の外交員をしているP君は、せつない顔をして肯きました。
残念なことには、ぼくとしては、昔の友人がもう少し出世しているかと思ってパリに来たのでありますが、どいつもこいつも、あまりパッとしてはいなかった。P君も、妻と子供二人をかかえ、フウフウ生活難にあえいでいる三十代のあわれなフランス人である。
「君も女房にオーバをかけたり、煙草に火をつけてやる一人かね」
「うん」
彼は情けなそうな顔をして首をたてにふりました。
「日本じゃ本当にそんなこと、しないですむのかな」
「あたり前ですよ」
「へえ」
「なぜ、君ら、そんな阿呆くさいマネを今でもやっているのかね」
「あの……」
彼は困惑した表情で呟きました。
「俺はうまく説明できないよ」
本当でした。このP君は学生の頃も、頭のめぐりがそれほど良い男じゃなかった。こいつにこの問題をたずねに来たのは、失敗だったとぼくは考えました。
「あのね」
彼は突然手をうって声をあげました。