いい気な女
民よ、新年はいかがお過ごしであったろうか。女王様にとって、今年は輝かしき「巨乳元年」である。ま、巨乳ったって、たかだかCカップ〜Dカップ程度なんですけどね。これまでAカップの貧乳に四十五年も甘んじてきた女といたしましては、涙がこぼれるほど、もったいねぇ乳でございますだ。
しかも、だ。こればっかりは天然ではなくサイボーグの強みと言うべきか、姿かたちの美しさは完璧。普通、四十五歳にもなったら、どんな美巨乳もだらしなく垂れてくるものであるが、女王様の作り物のオッパイはこんもりとお椀形に盛り上がり、そこだけ二十代の張りを保っているのだ。腹は紛れもない四十代だがな……ああ、痩せなきゃ。
さて。女王様のこのたびの豊胸手術は、昨年の十二月十九日に行われた。点滴で睡眠薬を注入し、眠っている間に局部麻酔をかけて腋の下を切開する。以前のフェイスリフトアップ手術時と同様、半分眠った女王様は、自白剤を打たれたも同然の状態。カメラマンや編集者の立ち会いのもと、マッド高梨院長のセクハラ質問に、赤裸々に答えたのであった(記憶にないが)。
「うさぎさん、胸が大きくなったら、誰とセックスしたいですかー? やっぱり、ホストのHくん?」
「H〜? あんな男、もう結構よ。うざいもん」
「へぇ〜。じゃあ、誰か他に候補はいるの?」
「そうねぇ……特にいないけどぉー、TとかN(いずれもホストの名)なら、ま、やらせてあげてもよろしくってよ」
な、何が「やらせてあげてもよろしくってよ」だぁーっ!!! おまえ、何様のつもりだよっ! さすが、日本一の勘違い女・中村うさぎ女王陛下。シリコン入れる前から、既に「巨乳自意識」満々かぁ──っ!!
と、その場にいた全員が心の中でツッコんだそうであるが、女王様自身もそれを後に聞いた時には激しく汗顔の至りであった。
うへぇ、恥ずかしい〜! 薄々気づいてはいたけど、私ってやっぱり、すげぇ傲慢な女だったのね。「やらせてあげてもよろしくってよ」だって。フツーじゃないよ、この発言。これが他人だったら、女王様、後ろから飛び蹴り入れるね。
で、手術が終わって覚醒した後も、まだ睡眠薬で軽くラリっていた女王様、タカナシクリニックのベッドの上で頼まれてもいないのに様々なセクシーポーズを取り、カメラマンに「撮れ、撮れ」と命令したらしい。じつは、この部分も女王様の記憶からすっぽりと抜け落ちていて、高梨院長から聞いた時には自分のアホさに眩暈《めまい》がしたほどであった。
すげぇ! いい気になってるよ、この人ーっ! たかだかオッパイが大きくなった程度で、天下取った気でいるよ、絶対ぃ〜〜っ!
そうなのだ。自らを「バカ女」などと称しながらも、じつは「ちょっとくらいは賢そうに見られた〜い」などという薄汚い下心に支配されている女王様は、決して人前で「いい気になってる」様子を見せないよう普段から粉骨砕身の努力をしているのであるが、ひと皮剥けば、これこのように思いっきり「いい気」になりまくっているのである。
民よ、女王様の巨乳元年は、別名「勘違い元年」だ。今年もよろしくな!