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さすらいの女王04

时间: 2020-10-22    进入日语论坛
核心提示:寒い宮殿 現在、我が家の最重要テーマは「越冬」である。この冬を、いかに無事に越せるか、という問題ね。 というのも、我が家
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 寒い宮殿
 
 現在、我が家の最重要テーマは「越冬」である。この冬を、いかに無事に越せるか、という問題ね。
 というのも、我が家にある三台のエアコンのうち二台が壊れ、残りの一台はリモコンがゴミの山に埋もれて行方不明。家の中が汚いから修理屋さんも呼べず、女王様と夫は暖房もない宮殿で、ひたすら厚着にて凍える寒さをしのいでいる状態なのだ。現に今だって、家の中で毛皮のコート着て原稿書いてるの。ゴージャスなんだか貧乏なんだか、自分でもよくわからないわ。
 貧乏といえば、今月、久々にカード会社からの請求が四百万円に達し、慌てて各社から前借りして金を掻き集めたものの、どうしても百万円足りずに、買ったばかりの夫のカルティエの時計を質屋に入れてしまった。あと一週間待てば、新潮社から百万円が振り込まれる。それまで時計なしで我慢してくれ、夫よ。暖房もない、時計もない、こんな暮らしをさせて申し訳ない。君の伴侶は、甲斐性があるんだかないんだか、本当にわからん女だ。世間でいうところの「ダメ亭主」は働かないうえに浪費癖があるらしいが、君の伴侶はとりあえず働き者ではあると思う。ただ、稼ぐ以上に遣ってしまうのだから、やっぱりこれは「甲斐性なし」なのであろう。やれやれ。
 それにしても、寒さというのは人間の生きる気力を著しく阻害するものである。毛皮を着てパソコンに向かっても、しんしんとした冷気は女王様の指先をかじかませ、キーボードを打つのも一苦労だ。せめて熱い湯に入って身体を温めようと思っても、浴槽の蓋の上には積年の洗濯物の山がどっしりと漬物石のごとく陣取っており、それをば押しのけて僅か三十センチほどの隙間から身体を滑り込ませて入浴を図ったが、年末にシリコン入れて膨らませた乳がつかえて、これまた思わぬ苦労を強いられてしまったのだった。
 チッ、巨乳なんて必ずしも効率のいい物じゃないわね。巨根と同じだわ。他人に喜ばれたり羨ましがられたりして初めて存在価値が確認できるけど、他者の視線の介在しない日常生活ではブラブラと重くて邪魔なだけの無用の長物。女王様は顔をしかめ、浴槽の中で身を丸めつつ、「そうだわ。この巨乳の苦労を、貧乳女たちに話してやって自慢しちゃいましょ」と思いついて、風呂から上がるや早速、行きつけの飲み屋に直行したのであったが……。
「へぇ〜、豊胸手術したんだ。何カップになったの? Cカップ? ふぅ〜ん」
 息せき切って報告した相手は、元プロレスラーのキューティー鈴木。女王様のCカップを羨ましがるどころか顔色ひとつ変えない彼女に業を煮やして、
「あんた、何カップよ?」
「あたし? Dカップ」
「…………」
 ムッとして押し黙った女王様に向かって、その場にいた女たちが次々と名乗りを上げる。
「わたしはEカップだよ〜」
「あたし、Fカップでーす」
「な、何だよっ! てめーら、全員、デブじゃん!」
「うわぁ、聞いた? すっごい負け惜しみ〜」
 うっがぁ〜〜っ、悔しい〜〜っ!!! シリコン入れても負けてる女王様、寒いし貧乏だし、今年はホントにいい事なしだっ!!
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