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さすらいの女王10

时间: 2020-10-22    进入日语论坛
核心提示:喋ります 前回もご報告申し上げたとおり、女王様はNHKのトーク番組で「夫婦とは何か」という問題を検証していくこととなった
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喋ります
 
 前回もご報告申し上げたとおり、女王様はNHKのトーク番組で「夫婦とは何か」という問題を検証していくこととなった。『今夜は恋人気分』という番組である。その一方で、もうひとつ、テレビ東京の『女神の欲望《リビドー》』という深夜番組にもレギュラー出演することとなり、こっちは作家の岩井志麻子さんと一緒にやるので、またどんな破天荒な内容になるのか予想もつかず、NHKとは別の意味で楽しみなのであった。
 ま、女王様の近況は、このような感じである。テレビに出るのは正直あまり好きではないのだが(私はやはり活字媒体の人間であり、映像は私という人間が考えていることをきちんと責任持って表現できるメディアとは思えないので)、少しでも自分にとって刺激になるのなら、そして、これが一番大きな動機なんだけど、今回の引越しによって跳ね上がった家賃を毎月払っていくために、従来の女王様のポリシーに反するがごとき「レギュラー出演」(しかも二本もな)が新たな現実となってしまったのだった。忸怩《じくじ》たる想いがないかと言えば、嘘になる。しかし、やると決めた以上はやってやろうじゃないの。テレビという媒体に飲み込まれないよう、足元に気をつけて頑張りますわ。
 それにしても、女王様の「テレビに対する不安」というのは、いったい何なのだろう。これまでにテレビに出て幾度か不快な想いをした、というのは確かなのだが、その不快さが女王様の何を脅《おびや》かすものなのか、これまではっきりと考えては来なかった。単にテレビという媒体に対して不信感を抱いただけで、それを自身の問題として問いかけたことはなかったのである。
 だが、よくよく考えてみると、これは「話す自分」と「書く自分」とのギャップをテレビによって暴露されてしまうことへの不安ではなかったか。文章ならばきちんと推敲《すいこう》できて、納得のいくまで自分を語れるのであるが、女王様におかれましては会話における自己表現能力が致命的に欠けており、結果、思っていることの半分も言い表せないというジレンマに陥ってしまうのである。半端に語られた言葉は、直ちに批判の刃となって女王様に襲いかかり、そして女王様は「自分でも半端だと認めざるを得ない言葉」に責任を十全に負うことができない。よって、文章の時のように「喧嘩上等」といった覚悟ができないので、覚悟のできない仕事はしたくない、と、このような結論に達していたのだと思う。
 なのに、女王様はついにテレビのレギュラー番組を引き受けてしまった。苦手な仕事を請ける、というのは、何かとんでもない失敗(番組の失敗ではなく、女王様がのちのち自己嫌悪に陥るような失敗)をしてしまう危険性を孕《はら》んでいる。だが、その失敗をしないと、女王様は己の「会話能力の欠如」が何に起因するものなのか、永遠に向き合えないような気もするのだ。
 女王様が「喋り」で自分を表現できないのは何故か? いかなるコンプレックスが女王様を口籠《くちごも》らせるのか?
 民よ、番組を観る機会があれば、そのあたりを大いに検証していただきたい。
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