このたび、めでたく港区から脱出し、渋谷区へと遷都した女王様である。しかし、めでたいことには金がかかるもので、敷金礼金などの諸費用が約三百万円、引越し業者に支払った代金が約八十万円、合計三百八十万円もの金が遷都に費やされてしまった。おかげさまでスッカラカンの女王様、新しい宮殿には、いまだカーテンも掛かってない。カーテンを買う金がないのである。わっはっは。まさにガラス張りの私生活じゃ!
それにしても、引越し費用の八十万円には驚いた。荷造り御無用のラクラクパックをお願いしたのだが、見積もりの営業マンは我が宮殿に一歩足を踏み入れた時点で軽く絶句し、カシャカシャと電卓をはじいて、
「こんな感じですかねぇ」
「は、はちじゅーまん……」
見積書を覗き込むと『ダンボール(大)百個、(小)百個』などと書かれているではないか。全部で二百個か。どんな大荷物や。さすが女王様、と、自分で自分に感銘を受けたわ。
ちなみに今度の渋谷宮殿には、冷蔵庫も洗濯機も乾燥機もエアコンも食器洗い機も全部ついていて、女王様は手持ちの電化製品のほとんどを引越し業者に引き取っていただくことになった。その引き取り費用だけでも三万円である。物を買うにも捨てるにも、いちいち金のかかる我が日本。もう二度と冷蔵庫も洗濯機も買うもんか、と、心に誓う。冷蔵庫も食器洗い機もまだまだ使える状態だから、引越し業者はこれをリサイクルして売れば、女王様から徴収する引き取り料金と古道具屋への売却代金とでダブル収入となるワケだ。結局、ひとりで損してるのは消費者じゃんか。民よ、理不尽であることよのぉ。
しかし、生来の面倒臭がり屋である女王様は、金を払ってでも電化製品を引き取っていただきたい。自分で処分するのは真っ平だ。よって、自分がラクする分、余分な金がかかるのは仕方なかろう。梱包だって、自分でできないし。
明細を見ると、ダンボール梱包費用、ダンボール購入費用、梱包作業員手当て、などなどで約四十万円となっている。これに運送費だの運送作業員手当てだの不要品引き取り料だの何だのでさらに約四十万円。で、合計約八十万円、と、こうなるワケだ。これが高いのか安いのか適正なのか、女王様には判断がつかん。ただ理解できるのは、ダンボール箱などを近くのスーパーなどから自分で集め、梱包をすべて自力でやったら半額で済んだ、という事実であるが、二百個ものダンボール箱をいったいどこから集めて来られるというのだ。無理よ、無理。結局、金で何とかしてもらうしかないでしょ。ああ、それにしても八十万円はイタい。
と、このようにボヤいていたら、またまた新たな問題が勃発した。電話を移転しようとしたところ、NTTからこう言われたのだ。
「お客様の電話加入権は港区役所に差し押さえられておりますので、勝手に移転手続きはできません」
「使用停止もできないの?」
「はい。できません」
「でも、このまま引っ越したらどうなるの?」
「次に引っ越して来た方が電話を設置できません」
がぁ────ん!!!!
またしても港区役所と一戦交える予感に打ち震える女王様なのであった……。