「子宮を取るかもしれん」と宣言したら、友人知人や読者の方々から「女王、早まってはなりません。今一度、ご熟考のほどを」と諫《いさ》められてしまった。どうやら、軽はずみに取ってはならんものらしい。
私を診察した医者は「卵巣を残せばホルモン異常も起きないし、更年期障害や骨粗鬆症《こつそしようしよう》の心配もありません」と太鼓判を押したが、とりあえずセカンド・オピニオン、サード・オピニオンも参考にすべく、いくつかの病院をハシゴしてみようかと考えている。
美容整形手術をして学んだことが、ひとつある。医者というのは、腕はもちろんだが、自分との相性も大切である、ということ。わからないことは徹底的に質問できて、意思の疎通をきちんと行える医者が、自分にとっての名医となるのだ。
患者には医者を選ぶ権利がある。当たり前のことなのだが、複数の病院を渡り歩く時間の余裕もなく(病院って、どうしてあんなに長時間待たせるんでしょうね?)、自分には専門的な知識もないからプロにお任せしよう、などという意味不明の謙虚さが発動して、ついつい「ま、ここでいいや。大きな病院だし、間違いないでしょ」と安易に決めてしまう。だが、自分の身体のことなのだから、こんなところで謙虚になる必要はないのである。医者って、意外と責任取ってくれないしね。
大学生の頃、ガラスの破片で指をざっくり切ってしまい、救急病院で縫ってもらったことがある。かなり深い傷で指の筋まで切れてしまっていたのだが、担当の医者がそれに気づかずそのまま縫合してしまったため、女王様は傷が治ってからも指先で物がつまめなくなり、再度、同じ病院を訪れたのだった。べつにクレームをつけるつもりは毛頭なかったのに、診察室で事情を話した途端、医者が三人も出て来て「救急医療の基本は応急処置である。よって当方の医療ミスではない」と、妙に高圧的に諭された。誰も「医療ミス」だなんて言ってないのに。ただ、「こないだ縫ってもらった指が動かないんですけど」と言っただけなのに。医者って責任取るのが怖いんだなぁ、と、その時にしみじみ思いましたよ。
ま、指の筋なんか繋げば治るけど、臓器ばかりは取ってしまったら取り返しがつかない。民草たちの言うとおり、慌てずにゆっくり考えたいと思う。「子宮の喪失」自体には何の感傷もないが、そのせいで他の病気を誘発してしまうのは、女王様とて嫌である。じっくりと相談に乗ってくれて、私にとって一番いい治療法を考えてくれる医者を捜し当てたい。王子様を捜す気分、とでも言うのかしら。「子宮筋腫の王子様」ね。もちろん、「王子様」が女医さんである可能性も、かなり高いけど。
そんなワケで、さすらいの女王は、当分の間、あちこちの病院の婦人科をさすらうことになりそうなのである。この連載タイトルを決めた当時は、まさか病院をさすらうとは思いも寄らなかったなぁ。わずか数カ月の間に、人は、「子宮を取るべきや否や」などという予想外の問題に直面するのだ。これからまた数カ月後には、いったいどんな問題に直面していることやら。自分の人生から目の離せない女王様なのであります。