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さすらいの女王22

时间: 2020-10-22    进入日语论坛
核心提示:愛しているのは「幻想の自分」「自分の遺伝子への執着」という行為で思い浮かぶのは、「クローン作成」である。諸君は、自分のク
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 愛しているのは「幻想の自分」
 
「自分の遺伝子への執着」という行為で思い浮かぶのは、「クローン作成」である。諸君は、自分のクローンを作成したいと思うだろうか? 女王様は、思わない。そもそも自分のクローンなんか作成した日にゃ、整形前の丸顔&貧乳の自分がそっくり再生されてしまうワケであり、せっかく肉体改造までして自分から逃げ出した女王様の悪あがきは何だったのよ、ということになるではないか。
 もしも整形前の丸顔&貧乳の「自分」が目の前に現れたら、女王様はそいつを愛せるだろうか? いや、愛せる愛せない以前に、そいつを「自分の複製」と認識できるだろうか? もはや以前の顔立ちを忘れてしまった女王様、その女の顔をしみじみ眺めて「何よ、このブス」とか思うんじゃなかろうか(←あり得る)。
 美容整形した女に関してよく言われていた揶揄《やゆ》は、「結婚して子どもが生まれたら、似ても似つかないブスが生まれて、整形したことがいっぺんにバレちまうんじゃねーの?」といったものである。しかしまぁ、子どもというのは必ずしも両親のどちらかに似ると決まったものではないので、生まれた子どもが不細工であったとて、「そういえば死んだ曾祖父に似てる」などと言い張ってしまえば、いくらでもごまかせよう。が、クローンは、そうはいかない。本人の遺伝子の複製なのだから、整形女は否応なく「かつて密かに殺して葬った自分の顔」に直面させられる羽目になるのだ。整形女である女王様としては、想像しただけで震撼してしまう光景だ。
 このように考えると、女王様には「己の遺伝子」に対する誇りもナルシシズムもないのか、と、こういう疑問が発生するのであるが、民よ、これは微妙な問題である。遺伝子が複製するのはもちろん容姿だけではなく、例の「遺伝子診断書」で報告された「精神的傾向」もそっくり再現されてしまうのであろうが、「憂鬱・暴力遺伝子」と「好奇心遺伝子」に変異のある女……すなわち依存症や自傷行為にハマりやすい傾向を持ち、衝動的な言動が多く見られる女など、女王様は自分以外にあまり身近に見たくない。近親憎悪が働いて、きっと自分のクローンを深く憎むことになるであろう。もしかしたら、殺し合っちゃうかもな、私たち……。
 女王様は人一倍、ナルシシズムの強い人間である。そうでなければ、こんなに自分に拘泥しない。けれども女王様が愛しているのは、遺伝子に刻まれた「本来の自分」ではなく、自分の心の中で好き放題に創り上げた「幻想の自分」なのだ。ナルシシズムの神殿に祀られたその女神像に我と我が身を近づけるべく、女王様は肉体を改造し高価な衣装で着飾り小賢しげな言葉を並べて空っぽの脳ミソをごまかし、ありとあらゆる手段を駆使して「自己粉飾」に血道を上げてるワケだ。
 でも、皆さんだって同じでしょ? 本当の自分を愛せる人なんて、この世にどれほどいらっしゃるの? あなたの遺伝子に書き込まれた「本来の自分」なんて、ただのオッチョコチョイだったり恐ろしく凡庸な小心者だったり不細工なチビだったりするのよ、きっと。
 我々の人生はフロイトの言う「父殺し」でも、「母殺し」でもなく、「自分殺し」から始まるのではないか。
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