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さすらいの女王27

时间: 2020-10-22    进入日语论坛
核心提示:生田博士に遺伝子を学ぶ(3)「遺伝子を活用するのは、脳です。そして、脳を刺激するのは言葉と行動です。なかでも言葉は、とり
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 生田博士に遺伝子を学ぶ(3)
 
「遺伝子を活用するのは、脳です。そして、脳を刺激するのは言葉と行動です。なかでも言葉は、とりわけ重要なんですよ」
 生田氏の目が、ひたと女王様を見つめた。
「自分の中でもやもやと思っている気持ちが、はっきりと結晶化される……それが『言葉』です」
「言語化されることで、明確に意識化される、ということですね」
「そうです。その言葉によって脳は刺激されて反応し、脳内物質やホルモンを分泌させ、図書館に使者を遣わして遺伝子をピックアップするわけ」
「なるほど。言葉によって明確に意識化された想いを行動化するために、脳が動き始める」
「だから、言葉ってのは危ない。言語化するかしないかで、その人の脳の動きが変わり、行動も変わり、人格にも影響するんです」
 うーむ、これはなかなか説得力に満ちた話である。女王様はかねがね、「言語化→意識化」という作業には重要な意味がある、と考えていた。自分の中の想いを文章にしたためることで、今までわからなかったことがふいに明確に理解できる瞬間がある。「書く」という作業が「客観性」を養うことにどれだけ貢献しているか……それを身をもって知っている女王様は、生田氏の説明に、深く納得したのであった。
 そうか。自分の想いを言語化して文字に書けば、その文字をまた自分の目が読んで、今度は外部情報として脳に送り込む。つまり、「言語化」とは、言葉によって一度思考を外に出し、再び内面化することなのだ。その「一度、外に出す」という作業が、「客観性」を養う、と。なるほど、そういうシステムか。
 ならば、生田氏の言うとおり、「言語化」とは諸刃の剣である。自分の言葉によって、とんでもない潜在意識が行動化される可能性もあるからだ。
 たとえば、『あいつ、ぶっ殺してやる』みたいなことを、人はしょっちゅう心の中で漠然と思ったりするわけである。ただ、言語化されなければ、それは単にもやもやした想いで終わる。ところが、それを口に出したり文字に書いたりすることで、脳がその言葉に反応するのだ。自分の発した言葉や書いた言葉を、自分の耳や目が外部情報として認識し、その情報が脳にフィードバックされて、殺意がきわめて明確に意識される。そして、その瞬間、脳は、その言葉の行動化に備えて動き始めるのだ。
 言葉には、力がある。古《いにしえ》の人々は、その「言葉の力」を「言霊《ことだま》」と呼んだ。そう、生田氏が語ったのは、その「言霊」の科学的なメカニズムなのである。
『はじめに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神であった』(ヨハネによる福音書第一章一節)
 女王様は中学一年生の時に、この聖句を授業で習った。「これをロゴスと言います」と、その時、教師は説明した。「ロゴスとは、言霊です」
 十二歳の女王様は、そこに含まれた意味をよく理解できないままに、その聖句とロゴスと言霊という語句を心に刻んだ。そして、それから約三十五年の時を経て、言霊の神は、その姿を明確に現したのである。
 言葉は、人間を変える。だから言葉は「神」なのだ。
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