子宮筋腫問題を放置したままの女王様に、新たなる身体的試練が襲いかかった。
今度は、眩暈《めまい》である。横になったり起き上がったりするたびに、眼球がグルグルと回る。もちろん、視界もグルグルと回る。ああ、地球はメリーゴーラウンド。でも、楽しくないわ。つーか、むしろ怖ぇ〜よ。私、どうなっちゃうんだろ?
これは、やはりアレか。更年期障害というヤツか。ネットで調べてみたら、眩暈にはいくつか種類があり、耳の三半規管に起因するもの、脳に原因があるもの、首からくるもの、などなど、そのいずれにも心当たりがある。耳は以前から軽く耳鳴り感があるし、脳の血管も時々ドクドク鳴ってるし、首と肩は慢性的に凝っている。ストレスから来るメニエール氏症候群ではないか、とアドバイスしてくれる人もいて、いったい何のストレスなのか知らんが、もしかしたら女王様、自分でも気づかないうちにお疲れなのか。
そんなワケで、思い切って早めの夏休みを取り、夫の故郷である香港に四泊五日の小旅行をしたのであった。旅行中、仕事をしたのは一日だけ。あとは朝から晩まで、食ってるか買い物してるか寝ているか、まるで有閑階級のごとき優雅にして怠惰な日々。そしたら、民よ、なんと帰国した頃には眩暈がピタリと治まってしまったではないか。凄いぜ、香港! メニエール氏もビックリの治療効果だ。SARSだ何だで、ここのところ人気薄だったが、ストレスも更年期障害も吹き飛ばす悦楽の国、お疲れ気味の日本国民よ、ぜひぜひ行ってみるがよい。
と、このように、思わぬ治療効果に上機嫌の女王様であったが、しかし、良く効く薬には強烈な副作用がつきものなのであった。眩暈の完治と引き換えに、香港で女王様が散財したカードの請求額は約三百万円、そのうえ朝から晩までのグルメ三昧が祟《たた》って腹部を中心にこってりついた脂肪は二キロ半。
「うぎゃあ〜〜!!!」
カードの請求書に失神しかけ、体重計の数字にクラクラと眩暈がぶり返す女王様なのであった。ねぇねぇ、ストレス発散旅行で新たなストレスを抱える私って、何? 結局は、無意味な遠出をしただけってこと?
ちなみに香港にて女王様がお買い物した品々は、シャネル、グッチ、ディオール、ヴェルサーチ、モスキーノ、ヴェルサス、D&Gといったブランドの服やら靴やら十数点と、毛皮のショール、イエローダイヤの指輪、カラーストーンの指輪、などなど。それに加えて、ペニンシュラホテルのスィートルーム四泊分の宿泊料とルームサービス料、連日連夜の豪勢な食事代。しかも調子に乗った女王様は帰りの空港の免税店で化粧品を十五万円分も購入した大バカ女であった。二キロ半も太りやがって、デブが顔にシャネルやラ・メールの高級クリーム塗ったって意味あるかい。己の腹の脂肪でも絞って塗っとけ、リサイクルじゃ!
と、ひたすら自分を責め、罵詈雑言を浴びせる今日この頃。しかし、どんなに自分を責め立てても冷や汗かきつつ前借りのメールを書いても、例のストレス性眩暈は一向に再発しない。散財と借金のストレスなんて、じつは大したことないってワケか。図太い女だなぁ〜。