気功を受けた翌朝からの大出血、「これって生理じゃなくて不正出血? だとしたら、この量は、只事じゃない病状の証拠?」と不安に慄《おのの》いた女王様であったが、出血はきっちり一週間で収まった。やっぱ、ただの生理だったのかなぁ?
それにしても不安は残っているので、一大決心して早起きし、「子宮筋腫ならここがお勧め」と友人からアドバイスされた某大学病院に行ったのだった。ここではUAE(子宮動脈塞栓術)とかいう治療法を取り入れていて、これは腿の付け根あたりを数ミリ切開してカテーテルを通しゼラチン様のもので子宮動脈に栓をすることによって筋腫を兵糧攻めにして縮小させる、という、副作用も少なく効果抜群の新療法なのだそうである。あまりにも多くの人が子宮摘出に反対し、このUAEを勧めてくれたので、女王様は「もし治療を受けるなら、ぜひともこれで!」と決めたのだ。導入している病院が少ないだけに、臨床データもまだ少ない治療法なので、興味のある方々には、その内容と効果のほどを女王様が身をもって示すことができる、とも考えた。どうやら美容整形以来、誰からも頼まれてないのにモルモットになる、という妙な快感に目覚めたらしい。世のため人のため、みたいな幻想が欲しいんですよね、要するに。
ま、それはともかく、朝も早うからタクシーに乗って件《くだん》の大学病院を訪れた女王様、三時間ほど待たされてイライラした挙句、ようやく名前を呼ばれて診察室に入ったね。医者は優しげなオジサマ、肉付きのいい腹回りに貫禄を感じる。
「数カ月前に突然激しい痛みがあって救急病院に行きまして、その時、子宮筋腫と診断されたんです。で、今回は十日も早く生理が来て……不正出血じゃないかと心配なんですが」
「なるほど。では、調べてみますか」
脚を開いて器具を突っ込まれる。エコーとかいうヤツであろう。その後、再び診察室に呼ばれて入ると、そのエコー写真らしきものを見ながら医者がひと言、
「ま、大丈夫ですよ」
「大丈夫って?」
「確かに筋腫はあるけど、そんなに心配ないですね」
「筋腫は今、どんな状態なんですか? 子宮のどのへんに、どれくらいの大きさの筋腫が、いくつあるんですか?」
畳み込むように尋ねると、医者は心なしか不快そうな顔をして、
「そういうことまでは、はっきりわかりませんね」
わからん、だと? じゃあ訊くけど、場所も数も大きさもはっきりわからんのに、何を根拠に「大丈夫」だなんて言えるんじゃあ!
これだよ。医者に腹立つのは、この部分だよ。自分の身体のことだから、医者任せにしないで、何でもきちんと把握しておきたいの。説明が長くなっても構わない、専門的な知識が必要なら勉強する。だからお願い、面倒臭がらずに説明して!
ムッとした女王様だが、心を鎮めて、こう訊いた。
「じゃあ今回の出血なんですけど、生理なのか不正出血なのか、どこで判断すればいいんでしょう?」
「予定日に来れば生理だよ」
当たり前じゃーっ、その予定日が狂うから判断つかんで心配なんじゃーっ!
ああ民よ、こんな医者に身体預けて大丈夫なのっ!?