突然だが、民よ、女王様は男にフラレた。カレン・カーペンターの取材でアメリカに行っている間に、メールで別れを宣告されたのだ。いやぁ、びっくりしたね。元々ネガティブな性格なので、常に最悪の事態を想定しているつもりなのだが、こんなに急にフラレるとは予想もしてなかったよ。
人のふり見て我がふり直せ、とは、女王様の母親が常々、口にしていた諺《ことわざ》である。今後、また恋愛をして別れるようなことがあったとしたら、相手に別れる理由をきちんと説明できるような人間になろう、と、決意した女王様だ。それが、付き合った相手に対するせめてもの礼儀だと、このたび実感いたしましたわ。
そんなワケで、渡米して数日後に「もう会いたくない」旨のメールを受け取ってガーンとした女王様は、早速、日本にいる夫にメールで報告したのだった。
「私、男にフラレちゃったみたい。悲しいよぉ」
「どうしたの? 何があったの?」
「一緒に旅行に行く約束をキャンセルされて、残念だったから、つい文句を言っちゃったの。だって私、そのためにすごく無理してスケジュール空けてたんだよ。だから悔しくって、『キャンセルは仕方ないけど、私も暇じゃないんだから、もう少し早めに言って欲しかったわ』って言ったら、それがカチンと来たみたいで『私も暇じゃありません。そんなことでいちいち文句言う人とは、もう付き合えません』って」
「えーっ、自分でキャンセルしといて逆ギレ? あなたがその日程を空けるために払った犠牲も、おかまいなしに?」
「うん。自分の仕事はこういう仕事だからって」
「彼にとって仕事が大切なように、あなたにとっても仕事は大切なのにね。普通は、怒る前に申し訳なく思うよ」
「まぁ、私の言い方も悪かったんだろうけど。そう思ってすぐに謝ったのに、許してくれないの」
「でも、変だよ。まさかそんなことで別れる人なんて、いないでしょ。他に何か理由があるんじゃない?」
「あるのかもしれないけど向こうが言わないから見当もつかないよ」
「そっか……仕方ないね。あなたとは価値観が違い過ぎるんだよ。そんな人とは、どのみちうまく行かないよ」
「でも、悲しい。こんなふうにブチッと切られて、今までのは何だったのか、と思っちゃう。私のことなんて、最初からそんなに好きじゃなかったのかも」
と、まぁ、このように、散々ウジウジしたやり取りをした結果、女王様はようやく眠りにつき、翌朝目覚めてみると、夫から次のようなメールが入っていた。
「元気出して。何があっても、ワタシはあなたの傍にいるから」
その言葉はフラレた心にジーンと響き、女王様はまたもや決意した。人のふり見て、我がふり直せ。いや、夫のふりを見習え、私。
「ありがとう。すごく嬉しい。もし、あんたがフラレた時には、私もあんたの傍にいてあげるね!」
すると夫は、あっさりとこう答えたのであった。
「いや、あんたには相談しないと思うけどね」
なんじゃ、そりゃっ!? 民よ、女王様は、フラレたことより、ここまで人望のない自分が悲しいぞっ!