前の検診から二カ月経って、ようやく自分の子宮筋腫の姿を拝める日がやってきた。病院で撮ったMRIの画像を見せてもらうのだ。
「直径四センチくらいのが真ん中に二つ、あとは小さいのが奥に三つくらいありますね。全部で五つくらいですか」
医者の説明を受けながら、不鮮明な画像に目を凝らす。確かに、子宮の真ん中(厳密に言えば、やや左寄り)に、双子の胎児のように丸い塊が寄り添っている。こんなものを、女王様はいつの間に孕んでいたのだろう。いつまで経っても生まれない、ただ子宮内で成長するだけの、魂も生命もない胎児のごとき腫瘍。
「これUAEで取れます?」
「うーん……UAEは、大きい筋腫がひとつある場合には有効なんですが、こんなふうに小さいのがいくつもあるケースは難しいね。そもそもUAEは、筋腫に栄養を送っている血管を塞いで兵糧攻めにする、という手法なんですよ」
「はい、知ってます」
「だから、これだけ数が多いと、血管をいくつも塞がなくちゃいけないし、そうなると結構厄介なんだね」
「なるほど……」
UAEを採用している病院、という条件で、ここを選んだのだ。それが受けられないというのなら、別の病院に行ってもよかろう。と、思いつつも、とりあえず訊いてみた。
「じゃあ、先生は、どのような治療法をお考えですか」
「どうせ年齢的にも、もうすぐ閉経だから、薬で生理を止めて筋腫を成長させない方法がいいと思いますね」
「でも、それじゃ筋腫は残ったままでしょう? それに私、投薬治療は嫌です。ホルモン剤だから副作用が大きいと聞いてます。頭がボーッとしたり、のぼせたりするとか……」
「まぁ、確かに更年期障害のような症状は出ますね」
どうせもうすぐ閉経なんだし、更年期障害は免れないのだ、ちょっとくらい早く来たからって、それが何なんだ……と、医者が思っていたかどうかは知らない。が、女王様の耳には、医者のそんな声が聞こえてくるような気がした。
冗談じゃない、頭がボーッとしたら、たちまち、おまんま食い上げなんだよ、うちらの商売。それでなくても、ただでさえボーッとしてる女なのに、これ以上ボケボケしちゃったら、使い物になんねぇっつーの。
「まぁ、投薬が嫌なら手術ですね。子宮摘出か、あるいは開腹して筋腫だけ取り除くか」
「開腹せずに、筋腫だけ取り除く方法もあると聞いてますが」
「腹腔鏡を使った手術ですね。うちではやってません」
そうか……やっぱり他の病院を当たるか。開腹したら取り返しがつかない、という話をよく聞く。たとえば「筋腫だけ取る」という約束で手術を受けたのに、麻酔から醒めたら「やっぱり子宮取りました」と事後報告されて愕然、というケースも耳にした。返して、と言っても後の祭りだ。自分の臓器を勝手に取られるなんて絶対に承服できん。
と、まぁ、女王様がそのようなことを考えている時、医者は血液検査の結果を取り出し、さらりと言った。
「それから、腫瘍マーカーが基準値の二倍以上です。癌かもしれませんね」
「はぁっ……!?」
女王様、さらに愕然!