買い物が止まらない話をあちこちで書いたり喋ったりしまくってたせいか、ついにこのたび、「買い物がやめられない情けない女の代表選手」としてTV出演するはめになってしまった私である。
非常に不名誉な役回りであるが、本の宣伝にもなるし、なにより自分の蒔《ま》いた種だから仕方ない。収録の結果は予想どおり惨憺たるもので、山田まりやだのガダルカナル・タカの妻(名前忘れた)だのに言いたい放題の集中砲火をくらい、見事、人間失格の烙印を額に押されたその瞬間を、全国ネットで放映されてしまったのであった。
やれやれ。つくづく因果な人生だよなぁ。生まれてきて、すいません。
だがまぁ、この件に関する怒りは、このコーナーのテーマから外れるので、また別の機会に綴るとしよう。今回、ここで告白しなければならないのは、私がTV出演のためにおこなった掟破りのダイエット方法である。
TV出演の話をいただいた時、私が最初に思ったのは、「TVは肥って映るっていうから、出演するからには痩せなきゃいけないわ」ということであった。
さすが、女王様。自分の人間性が誹謗《ひぼう》されようという時にTV映りの心配をするとは。フランス革命の折、怒れる民衆の前に着飾って現れたマリー・アントワネットのごとき女である。
で、私が採用した緊急ダイエット方法とは何か……それは、「利尿剤」であった。
利尿剤ダイエットは、モデルの女の子がこっそりおこなってる違法ダイエットとして、その筋では有名なものだ。なぜ違法なのかというと、利尿剤は医者の処方箋なしには入手できない薬であり、もちろん医者はダイエットなんかのために処方箋を出してくれないから、闇ルートで買うしか術《すべ》がないためなのだ。
警告しておくが、このダイエット法は身体に悪い。健康な人間が、たかがTV映りのためなどで手を出してはいけない、禁断の劇薬である。
でも、私は手を出しましたよ。そして、確かに痩せたね。三キロも。顔なんかスッキリしちゃって、心なしか脚も細くなった気がした。もしかして、私は肥ってたんじゃなくて、単にムクんでただけだったのか?
なにしろ、初めて薬を飲んだ夜のオシッコの量が凄かった。もう、出るわ、出るわ。那智の滝のごとく、シンガポールのマーライオンの噴水のごとく、とめどなく壮大に、ほとばしり続けたのである。買い物が止まらないどころか、オシッコも止まらない女になっちゃったんだよ。「おーい、誰か蛇口を締めてくれぇ」と叫びたくなっちまったね、正味の話。
元来、私はオシッコをしない女であった。大学時代には「ビッグタンク中村」の異名をとったほど、絶大な膀胱の貯水量を誇る女なのだ(誇るなよ)。車でスキーに行く時など、他の女性に比べてトイレ休憩の頻度が極端に低く、ドライバーから重宝がられたものである。
その私が、夜中に何度も何度もトイレに行き、そのたびに気前よく水分を大放出してしまったのだから、まことに利尿剤とは恐るべき薬ではないか。この小柄な身体のどこに、そんなに水分があったのかと、我ながら感心しちゃったよ。
オシッコ溜めるより金貯めろ、中村うさぎ!
しかも、薬のせいか胃を悪くして食欲も激減し、「ああ、ホントに身体に悪そう」と実感する毎日であった。胃の弱い人は必ず痩せるね、この方法。そのうち胃潰瘍になって胃を切るはめになれば、ますます食物の摂取量も減り、ミイラのごとくほっそりとした体型になれるであろう。ありがたや、ありがたや。
で、この壮絶に身体に悪いダイエットのおかげで強引に三キロ痩せた私は、はたして望みどおり美しくTVに映ったのか?
じつは、私の顔は全然映してもらえなかったのである。
まるで犯罪者のようにスリガラスの奥に閉じこめられ、「本人のプライバシーのため、顔はお見せできません」状態にされてしまったのだ。そのほうが視聴者の好奇心を煽れるからだってさ。打ち合わせでは、顔出しましょうって言ってたクセに。
ケッ、バカバカしい。まさに小便のごとくムダな努力であったよ。覚えてろよ、フジテレビ!