諸君、非常に不本意なことであるが、女王様は、またカモにされてしまったようである。
しかも今回、女王様は買う側ではなく、なんと売る側であったのだ。
何を? もちろん、ブランド物だ。
衣替えの季節が来るたびに、やれシャネルだ、グッチだ、ディオールだ、フェンディだと、懲りもせずブランド物の服を買い漁る私であるが、このような生活で増えていくのは借金ばかりではない。当然、着なくなったブランド物の服が、家のあちこちに自己嫌悪の山となって堆積しているワケだ。
が、聞くところによると巷《ちまた》では「リサイクルショップ」なる店が流行しており、中古のブランド物を委託販売してくれるそうではないか。そこで女王様は、さっそく何点かの服を選び、雑誌に広告を出していた青山「FASCINO」なる店に、持ち込んだのであった。それが、今年の五月のコトである。
以来、ウンともスンとも音沙汰がないまま、三カ月たった八月のある日、痺《しび》れを切らした私は、店に電話をかけ、委託した服をすべて引き取りに行った。ところが……!!!
店員が袋に詰めて手渡してくれた服の量が、預けた量よりも、どうも少ないような気がするのだ。疑問に思った私は、持ち帰る前に袋を開け、店員の前で預かり証のリストと照合することにしたね。
すると、どうだい! シャネルのワンピースとスーツ、エルメスのブラウス各一点が、足りないではないか。いやぁ、確かめてよかった。あのまま帰宅してたら、後で文句を言おうにも証拠がないし、悔しい思いをするところだったぜ。まったく、油断も隙もありゃしないよ。
単なる管理ミスなのか、それとも狡猾な確信犯なのか……いずれにしろ、信用ならない店である。女王様の顔は、たちまち憂いに曇ったね。
「どーゆーコトですか?」と問いつめると、店員はしばらくバタバタと捜しまわった挙げ句、「売れてしまったようですね」と、ケロリとした顔で答える。
「売れたんなら、代金をお支払いいただけるはずでしょ?」
「はぁ。でも、うちは月末締めの二十日払いなんです。ですから、九月二十日に入金します」
「ホント?」
もはや店に対する信用を全く失くしてた私は、露骨に疑いの口調で答えたよ。
「なら、文書できちんと、そう書いてくださいな」
「わかりましたぁ」
店員はその場で、私の持参した預かり証に、こうしたためた。
『10年9月20日に¥223400をお支払い致します』(原文ママ)
文末には、責任者を名乗るO氏のハンコも押してある。
ま、これで許してあげましょ、と、女王様は満足して家路についたのであるが……しかーし!
その二十二万円は、十月五日現在に至るまで、ついに支払われていない。何度、店に電話しても、「責任者が不在なので」の一点張り。もちろん何度伝言を頼んでも、責任者のO氏から電話の一本もかかってこない。
そう。どうやら私は、踏み倒されちゃったようなのだ。シャネルとエルメスをタダで騙し取られ、売り飛ばされちゃったんである。
ガチョ————ン!!!
いやぁ、まいった。もし読者のなかに、「私も青山の『ファッシノ』に委託してるわ!」と思い当たった方がいらしたら、速攻で引き取りにいくことをお勧めする。ダマテンで売り飛ばされてるかもしんないからね。
委託販売ってのは、相手が売買の素人だけに、その気になれば簡単に騙せる商売だ。しかも、タダで巻き上げた商品を売るワケだから、まさに濡れ手に粟、頭を使わないサイテーの詐欺行為ではないか。泥棒と一緒だよ。そーいえば、「嘘つきは泥棒の始まり」って、ウチの母ちゃんが言ってたなぁ。
もちろん、きちんとした委託販売もあると思うよ。でも、こーゆー泥棒業者も大手を振って商売してるのが現実なのさ。
ま、これで、ブランド物にまつわる女王様の悲喜劇に、新たなエピソードが加わったワケだ。平成カモネギ女、中村うさぎ。その人生に、明日はあるのか? たぶん、ない(涙目)。
*この「ファッシノ」からは、後日、丁寧な謝罪を受け、お金も無事に振り込んでいただいた。なんでも、店長がいきなり辞めて、経理が混乱してたとのコトである。そーだったのか。ま、金さえ払っていただけりゃ、女王様は文句ありませんよ。