じつは私、キャラクター・グッズが大嫌いな女である。ミッキーマウスとかキティちゃんとか、世間一般に人気のある「かわいいキャラ」は、すべて私の敵と言っても過言ではない。
考えてみると、昔はこんな女じゃなかった。ミッキーマウスをかわいいと思った頃もあったし、自分の車の中をキャラクター・グッズで飾りたててた時代(おもに女子大生時分)もあったのだが、今となっては赤面モノの思い出だ。
ああ、この私が車の中にトムとジェリーのヌイグルミを置いてたなんて……うぎゃあーっ!
と、このように、思い出しただけで恥ずかしさのあまりムンクの「叫び」状態になってしまう女王様なんである。
恥の多い生涯を送って来ました……って、太宰治か、私は。
しかし、なんでこんなにキャラクター・グッズが嫌いになったのかなぁ。あの媚びた目がイヤだとか、理由をあげればキリがないのだが、つきつめれば私が嫌いなのはキャラクター・グッズそのものではなく、それをカワイイと感じるギャル的感覚なんじゃないかという気もする。
つまりですね、高校生くらいの子なら許すけど、いい年してギャルギャルしてる女は気に食わん、と。そーゆーコトなのであろう。
たとえば三十歳を越した大人の女が、だ。幼稚園ぐらいの娘と一緒に、猫ちゃんや熊ちゃんのトレーナーを恥ずかしげもなくペアで着てる、その臆面のなさ……私は嫌いだ。他人のコトは放っとけという意見もあろうが、それでも私は、そーゆーのが嫌いなんだよ。それは、子どもを持ったコトのない私(欲しいと思ったコトもないが)の、ジェラシーだと思われても仕方ない。
で、そのキャラクター嫌いの私が、どーゆーワケか先日、キティちゃんグッズを買ってしまったのである。それは何かというと、じつはトイレットペーパーなのであった。
紙全体に、所狭しとピンク色のキティちゃんが印刷されたヤツ。キティちゃんとウサギちゃんとお花が飛び散った、夢いっぱい(悪夢かもしれないけど)のサンリオ・ワールド。
念のために言っておくが、その商品を見た途端、
「キャー、かわいーい! キティちゃんのトイレットペーパー、欲しーい!」
と、思ったワケでは決してない。その時、私の心によぎったのは、もっとドス黒い欲望であったのだ。
「キティちゃんの顔でウンコを拭いてみたい……」
これである。
かわいいキティちゃんのトイレットペーパーを、これほど邪悪な動機で買う客って、世界広しといえども私くらいのモノであろう。だが、ふと思いついた瞬間、その欲望は私の中で抑えがたく膨れ上がり……気がついたら、私はそのトイレットペーパーを抱えて、いそいそと家路をたどっていたのであった。
それからというもの、私は、まだたくさん残っていた我が家のトイレットペーパーを気前よく使いまくったね。一日も早くキティちゃんに会いたい! あの無邪気そうなツラを思いっきり汚してやるのよ、ホッホッホ!
キティちゃんがおまえに何をしたんだ、と、ツッコミを入れたくなる読者もおられるだろう。私にも、自分の気持ちがわからない。たぶん私の中には、世の中のすべての「キティちゃん的なるもの」に対する怨念が、ドロドロと渦巻いているのだろう。私の買い物依存症も、ブランド狂いも、すべてはその怨念から発したモノかもしれないのだ。
キティちゃん……かわいい顔して、食えないヤツ! そうそう、私、華原朋美も嫌いなんだが、なんか両者の間には一脈通じるモノがあるような……。
てなワケで、現在、女王様におかれましては、キティちゃんの面汚しという新しい愉しみを発見して、大いにストレス発散なさっておられる毎日である。
が、それにしても、しみじみ疑問に思うのは、本物のキティちゃんファン(特に大人)は、このトイレットペーパーをどんな気持ちで使ってるんだろーか?「キティちゃんの顔でウンコ拭くなんてイヤ!」とか、思いそうなもんじゃないか。思わないとしたら、やはりキティちゃんファン、不気味なヤツらである。