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ショッピングの女王45

时间: 2020-10-22    进入日语论坛
核心提示:年間の服飾費二千万円! 諸君、女王様は今、大変、落ち込んでいる。なぜなら、たった今、税理士の先生に叱られて帰宅したところ
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 年間の服飾費二千万円!
 
 諸君、女王様は今、大変、落ち込んでいる。なぜなら、たった今、税理士の先生に叱られて帰宅したところだからだ。
 そう。年に一度の確定申告の時期、私は、おのれの狂った浪費が引き起こした惨憺たる経済状況に、真正面から向き合わされるのである。できるコトなら一生、向き合いたくないのにさぁ……ああ、税務署のバカ!
 さて。平成十年度の私の収入だが、なんと前年度にくらべて、五百万円ほど減少しているコトが判明した。最初は「これも不況のせいかしら」と、いっぱしにタメ息つきたくなったのだが、よくよく明細を見ると、単に私が仕事を怠けたせいなのであった。チッ、なんだよ、自分のせいかよ、ちくしょー!
 だが、もっとも重大な問題は、じつは収入などではない。支出だ。それも、経費なんかで落ちないムダ遣い代だ。収入が減少したにもかかわらず、ムダ遣い額だけは、なぜか増加しているのである。聞いて驚け、私が遣った服飾費は、なんと一年間で二千万円だぁ——っ!!!
 ああ、もう自分がイヤ! いったい、二千万円も、何を買ったんだ、私はっ!? 純金の鎧兜か? ダイヤの王冠かっ!?
 ハッキリ言って、私は、二千万円ものムダ遣いが許されるほど恵まれた状況にいるワケではない。住民税と国民健康保険料さえロクに払えず、聞くも恐ろしいほどの延滞金と合体して巨大なモンスターと化したそいつらが、日夜、我が家の家計を脅かしてる有様なのだ。むじんくんにも、金借りてるしな。
 なのに、ムダ遣い額が二千万円。洋服だのバッグだの、愚にもつかないモノに二千万……うっひょー、信じらんねーや。きっとバカだね、この女。
 毎年のコトながら、税理士の先生も呆れて言葉を失っていた。アメックスの年間利用報告書を挟んで対峙する我々の間を、絶望という名の電車が、ゴォーッと音をたてて走り抜けていったね。ええ、あたしゃ、確かに聞きましたとも、その音を。
 ややあって、気を取り直した先生は、
「あのさぁ……なんで、こんなにムダ遣いすんの?」
「それが、自分でもわかんないんです。私、二千万円も遣ったつもり、ないんですけど」
「でも、遣ってるじゃない」
「そうみたいですねぇ。誰が遣ったんだろ、こんなに?」
「そりゃ、あなたでしょ」
「えー、やっぱり?」
 まるで宿題忘れた小学生のように、トボケて責任回避しようとする私であった。が、もちろん先生は騙されない。
「一回の利用額が高いのは……やっぱ、これだね。シャネル。この日だけで百三十万円も遣ってるじゃない。百三十万円も、何を買ってんの?」
「服です。シャネルって怖いんです、先生。年に二回、ファッション・ショーに呼ばれて行くと、ショーの後で百万くらい買わされちゃうんです」
「買わなきゃいいじゃない」
「でも、引っ込みがつかなくて」
 そーなのだ。この「引っ込みのつかない」性格が、私の今日の惨状を招いているのである。行かなきゃいいのにショーを見に行っては、周囲のマダムたちに対抗して、アレもコレもと片っ端から注文する。こーなったら、もう止まらない。私は欲と虚栄の暴走列車。明日は、どこまで行くのやら……ってな感じで、いやぁ、自分を見失うって怖いコトですよ(他人事かい)。
 こうして自分を見失うたびに百万円遣うと計算して、まあ、年に二十回は自分を見失ってんだな、私という女は。すげぇ、毎月じゃん。人間、どーやったら、毎月、自分を見失うコトができるのだ。しかも、素面《しらふ》で。
 そんなワケで、諸君、今回ばかりは女王様も猛省した。さきほど税理士の先生に立てたのと同じ誓いを、ここに立てよう。
 中村は、もう二度と、シャネルでムダ金を遣いません。だいたいさぁ、シャネルが私に何してくれるってゆーのよ? お歳暮くれるワケじゃなし。ヴェルサーチとディオールは、去年、シャンパンくれたぞ。ブルガリもワインくれたぞ。ああ、それなのに、シャネルよ。君が私にくれたのは、化粧水のサンプルだけ……もしかして、ケチ?
 ま、ともかく女王様の決意は固いのだ。シャネルよ、さらば。二度とショーに呼ばんでくれぇ!
 
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