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ショッピングの女王47

时间: 2020-10-22    进入日语论坛
核心提示:私のために描かれた絵 先日、女王様は、友人の個展を観に行った。福井江太郎という名の日本画家なのであるが、なぜか駝鳥《だち
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 私のために描かれた絵
 
 先日、女王様は、友人の個展を観に行った。福井江太郎という名の日本画家なのであるが、なぜか駝鳥《だちよう》ばかり描いてる変人だ。そう、福井江太郎は、駝鳥に取り憑《つ》かれた男なのである。
 しかし、美女に取り憑かれるならまだしも、よりによって駝鳥とは……なぜっ!?
 じつは、本人にも、その理由がわからないのだという。ただ、なぜか駝鳥が気になって(でも、気になるかなぁ、駝鳥なんて、ねぇ)、ここ数年、駝鳥ばかり描き続けているのだそーな。
 変な男だ。よくよく見ると、本人の顔立ちも、そこはかとなく駝鳥に似てるよーな、似てないよーな……もしかしたら両親が駝鳥だとか、あるいは駝鳥に育てられたとか、そんな衝撃の生育歴があるのかとも疑ってみたが、そのような事実はないそうである。ちょっと残念。
 結局、この男の場合、魂に駝鳥が棲みついてしまったのであろう。岸田劉生が、ある時期、冬瓜《とうがん》ばかり描いていたという話を聞いたコトがある。その頃の岸田劉生の魂には、やはり冬瓜が棲みついてたのだろーか(後には、娘の麗子が棲みついたらしいが)。画家ってぇのは、そうやって、魂に駝鳥だの冬瓜だのが座敷童《ざしきわらし》みたいに棲みついてしまう職業なのかもしれない。
 てなワケで、福井江太郎の個展は、さながら駝鳥の養殖場のごとく、さまざまな表情の駝鳥が壁いっぱいにひしめいているのであった。そして、「ああ、ここにも駝鳥、あそこにも駝鳥。ホントに変な男だね、まったく」などと暢気《のんき》に絵を観て回ってた女王様は、ふと、そこで自分に出会ってしまったのである。
 それは、一羽の駝鳥が目をすがめて遠くを見ている肖像画《ヽヽヽ》なのだが、その傲然ともたげた首、フフンと鼻でも鳴らしそうなエラそーな表情は、どっから見ても「女王様」なのであった!
 ガァ——ン!!!
 誰でもそうだと思うが、私は四十年あまりの人生で、駝鳥になった自分なんか想像したコトがない。だが、ここに、駝鳥の姿をした自分がいるのだ。傲慢ゆえに孤独な女王様(友達、少ないしな)。絵の中の駝鳥は上半身だけだが、私には見える。こいつは大きな足で、きっと他人を踏みにじってるに違いない。そーゆーヤツだ、こいつは。だって、こいつは私だもん!
 思いがけず駝鳥の自分を発見してしまった女王様は、その瞬間、確信したよ。
 こ、これは! 世界でたった一枚、私のために描かれた絵なんだわ! 私が買わないで、誰が買うというのっ……って、誰が買ってもいいんですけどね。
 しかし、買うつもりになるのは勝手だが、心配なのはお値段だ。だってさぁ、美術品って怖いんだもん。高くて。
「ねぇ……これ、いくら?」
 恐る恐る尋ねた私に、駝鳥男は涼しい顔で答えた。
「あ、それはね、三十万円」
 さ、さんじゅーまん、かっ!
 やはり、美術品、侮りがたし! シャネルのジャケットと、ほぼ同額だぁ!
 ま、人によっては、シャネルのジャケットが三十万円するってコトのほうが驚きだろうが、問題は、シャネルのジャケットは着て歩けるけど、駝鳥の絵は着て歩けんとゆー点である。
 すべての価値観が「どれだけ見栄を張れるか」にかかっている女王様にとって、不特定多数の他人に見せびらかせないモノに何十万も払うのは、清水の舞台から飛び降りるような買い物なのである。
「うーむっ!」と考え込んだ女王様であったが、そこでふと思いついたね。
「そーだ! ゆくゆくこいつが超有名画家になって、しかもポックリ死んだ日にゃ、この絵は何千万円になるのかも!」
 我ながら、酷い女である。友人の成功を願うまではいいが、その死まで勝手に願っちゃうとはな。やっぱ、この性格のせいで友達失くしてんだよ、絶対。
 だが、そんな女王様の邪悪な胸の内などツユ知らぬ画家は、
「えっ、買ってくれるの! ありがとう!」
 満面に無邪気な笑みを浮かべて、喜ぶのであった。ああ、知らない間に妻に生命保険掛けられてるタイプだな、こいつは。
 福井江太郎よ、こうなったら一日も早く、世界中にその名を轟かせてくれ! そして、絶対に私より長生きするなよ!
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