気の弱い奴には友人のうち、誰が自分と同じように気の弱い奴か、すぐわかります。そういう男はえてして、発作的にから元気を出すからすぐわかります。飲屋やバーなどで、酔うにつれ女給や友人を相手に、
「ぼくはヤルと言ったら断じてヤル。ヤルと言った以上、どんな障害があってもヤッてみせる」
そんなことをわめきながら、そのくせ相手の眼色を窺《うかが》い、自分の言葉を信じてくれたか、どうかをキョトキョトッと測定するから、すぐわかります。
そういう先輩上役がいたら、何よりも彼を悦ばす言葉は二つあると思ってください。一つは、「芯が、本当は強いんだなア、先輩は」であり、もう一つはガラリと趣向をかえて、「いい人だ、先輩は。善意があるために損をされているんですね」
理由は簡単です。気の弱い奴は、えてして芯が強いことにたまらなく憧《あこが》れるものですし、またいつも、その気の弱さのために損をしているからです。