しかし何だなあ。君の先輩、同僚、知人におらんかい。わずか、一ヵ月か二ヵ月、アメリカかヨーロッパを駆け足旅行でまわってきたくせに、とっくに外国の政治、経済、文化、生活、すべての「通」になったような得意づらで、二口めには「アメリカじゃあね」「ヨーロッパじゃあね」とふりまわす御仁。あるいは旅行話を幾度も幾度も部下や後輩に話してきかす御仁、あれは閉口するなあ。
「君い、アメリカじゃあね。芋にミルクをかけて食うんだ」
「へえ、芋にミルクをねえ。本当ですか」
「そうさ。芋にミルクをかけて朝食にする。ありゃ日本にはないけれど、実にうまいもんだよ」
なに、この御仁、コンフレークを芋にミルクをかけて食うと錯覚したわけで、コンフレークなら日本のどこにでもありますがな。
こういう御仁は無邪気でよろしいが、鼻持ちならぬ洋行がえりに三種あり。