第二の洋行がえりの型は、向うで大物ばかり親しく会ってきたようなことをホラふく連中である。これは映画やファッションや美容の世界で働く女性に多い。
「わたくしがハリウッドで、ジョン・ウェインのお宅に昼食におよばれしました時ね、ウェインはわたくしの着物を随分ほめてくださって、ぜひ、美しい日本に行きたい、日本に行ったらミミー(自分のことなり。ちゃんとした日本名あるにかかわらず、おのれのことを向うでミミーとか称してきたことが彼女、大得意なり)の案内で日本を見物したいと、そうおっしゃるんでございますのよ。そのとき、わたくしがジョン、日本では映画をおとりになる気はありませんのと、そうお伺いしましたら、チャンスがあったらぜひとりたい、そうお答えでしたのよ。本当にそれが実現すればうれしゅうございますねえ」
男にも同じ型がよくいる。
「オレがだな、A・B・Cカンパニーのミスター・コーション君、奴、カルフォルニアの財界では大物だが——彼と会ったとき、奴はオレをゴルフに誘ってだな、あとで一緒に小便もやったぐらいだ。そこでオレが日本じゃ、こういうのを臭い仲というと言うてやったら、奴、大笑いしてだな、アメリカでも同じ言葉があるというんだな。そこでオレたちは臭い仲から一歩すすめて義兄弟としてつきあおうじゃないか、まあ、そう言うてきたんだがね」
実は彼、向うでそのコーション氏という大物と握手だけし、頭をペコペコさげ、それで終ったのであるが、夢は現実と一緒になり自分でも見わけがつかんようになり、帰ってからも、こういうホラをふくのである。