人形の名前は、ピノッキオです。
目がクリクリと大きくて、鼻はツンとのび、なかなかにかわいい男の子です。
ピノッキオが完成した夜、ゼペットじいさんは星に願いをかけました。
「どうか、このピノッキオが、本当の子どもになりますように」
さて、ま夜中のこと、ゼペットじいさんの家のまどから、一匹のコオロギが入ってきました。
そしてピノッキオを見つけると、礼儀正しくあいさつをしました。
「やあ、かわいい坊や。わたしはの名はジミニー・クリケット。どうか、ジミーとよんでください」
さあ、そのときです。
突然、夜空の星がキラリとまぶしくかがやくと、スーッと星の光に乗って、星の女神がピノッキオとジミーの前にやって来たではありませんか。
「あっ、星の女神さま」
おどろくジミーに星の女神はやさしくほほえむと、美しい声でピノッキオに言いました。
「やさしいゼペットじいさんの願いは、星に届きました。ピノッキオ、あなたに声と自由をあたえましょう。そして、本当に良い子どもになったなら、ゼペットじいさんの願いどおり、人間の子どもにしてあげましょう」
そして女神は、魔法の杖(つえ)をクルリとふりました。
すると木で出来た人形のピノッキオが、なんと二本の足で立ちあがったのです。
「あらら。木の人形が動き出したぞ。こりゃ、すごい!」
ビックリするジミーに、星の女神はやさしく言いました。
「ジミニー・クリケット。もしよろしければ、ピノッキオが良い子になれる手伝いをしていただけませんか?」
「えっ! わたしの名をご存じで! さすがは星の女神さま。かしこまりました。このジミー、ピノッキオが良い子になり、必ず人間になれるよう、頑張らせていただきます!」
「うふふふ。ありがとう」
星の女神はほほえむと、星の光に乗って帰って行きました。
さて、朝になり、目をこすりながら起き出したゼペットじいさんに、ピノッキオが元気よくあいさつをしました。
「おはよう、お父さん!」
「ああ、おはよう。ピノッキオ、もう起きていたのか。・・・ええっ!!」
ピノッキオが動いて声を出していることにおどろいたゼペットじいさんは、思わずほっぺたをつねりました。
「なんじゃ。ピノッキオが動いておる! ピノッキオがしゃべっておる! ・・・わしは、まだ夢をみとるのか?」
「お父さん、夢じゃないよ。星の女神がお父さんの願いをかなえてくれたんだ。それに、良い子どもになったら、人間にしてくれるって」
「おおっ、ピノッキオ! 女神さま、ありがとうございます!」
ゼペットじいさんはピノッキオをだきしめ、それから大喜びで、ピノッキオが学校へ行けるように準備をしてくれました。
「では、お父さん。行ってきまーす」