このキツネとネコは、人をだましてお金もうけをする悪いやつらです。
キツネはピノッキオを一目見て、金もうけになると考えました。
そしてネコと一緒にピノッキオの前に立ちふさがると、ピノッキオに言いました。
「かわいい坊や、今からどこへ行くんだい?」
「学校だよ」
「学校か。えらいねえ。でも、君は見世物小屋に行くべきだ」
「見世物小屋?」
「そうさ、君ならきっと、見世物小屋のスターになれるよ」
「えっ、スターに?」
「スターもスター、君は大スターさ」
「大スターか、学校よりも楽しそうだね」
ピノッキオは、キツネとネコについて行きました。
「だめだよピノッキオ! 学校へ行かないと、良い子どもになれないよー!」
ジミーも、あわてて後を追いました。
さて、見世物小屋の親方(おやかた)は、ピノッキオを見ると大喜びで、キツネとネコにお金をわたしました。
「さあさあ、世にもめずらしい、自分でうごく人形だよ」
ピノッキオが舞台(ぶたい)に出ておどると、お客さんはしばらくビックリして、その後はわれんばかりの大拍手(だいはくしゅ)です。
「わあー、ぼくはスターだ」
ピノッキオはうれしくなって、むちゅうでおどりました。
でも舞台が終わると、ピノッキオは家に帰してもらえず、鳥カゴへ閉じこめられてしまいました。
「あーん、どうしよう。家へ帰りたいよー。お父さんに会いたいよー」
閉じこめられたピノッキオが泣いていると、夜空からスーッと光がさし込み、星の女神が現れました。
「あらピノッキオ、どうしてここにいるの? 学校へは、行かなかったの?」
「どうしてって・・・」
ピノッキオは、本当の事を言ったら、人間の子どもにしてもらえなくなると思い、うそをつくことにしました。
「実は、学校へ行く途中、いきなり見世物小屋の親方につかまったんです」
そのとたん、ピノッキオの木の鼻が、ズンとのびていきました。
「あれあれ、どうして? 鼻がのびていくよ」
あわてるピノッキオに、星の女神は言いました。
「ピノッキオ。いま、うそをつきましたね。あなたの鼻はうそをつくと、ドンドンのびていくのですよ」
「うそじゃないよ。本当だよ!」
ピノッキオがそういうと、ズンズンと、またまた鼻がのびてしまいました。
星の女神は、きびしい顔で言いました。
「いいですか。うそというものは、一つつくと、新しいうそを重ねてつかなくてはならなくなります。ピノッキオ、あなたは本物の人間の子どもに、なりたくないのですか?」
「なりたいよ! 本物の人間の子どもになりたいよ! 女神さま、うそをいってごめんなさい!」
ピノッキオが泣きながらさけぶと、星の女神は魔法の杖をクルリとふって、のびた鼻を元通りにしてくれました。
そして、ピノッキオが閉じこめられている鳥カゴのカギを開けてやると、
「助けてあげるのは、今度だけですよ、ピノッキオ。がんばって、きっと本物の良い子になるのですよ。それではジミー、ピノッキオを家までお願いね」
星の女神はそう言うと、星へと帰って行きました。
ジミーはピノッキオをつれて、ゼペットじいさんの家へ帰りました。
それからピノッキオは、女神さまとの約束を守って、良い子で楽しくすごしました。
ゼペットじいさんは、とてもピノッキオをかわいがり、ピノッキオもゼペットじいさんの事が大好きでした。
けれど、ある日のこと。
学校へ行く途中の道で、ピノッキオとジミーは、またあのキツネとネコに見つかってしまったのです。
「ピノッキオ、あいつらは悪いやつだ。はやく逃げよう」
「うん」
ジミーの言葉にうなづいたピノッキオは、すぐにその場を逃げ出したのですが、キツネとネコは先回りしてピノッキオをとおせんぼうすると、
「たいへんだ! ピノッキオ。君は病気なんだよ」
「ええっ、ぼくが病気?」
「そうさ。このままじゃあ、死んでしまうだろう。ああ、きみが死んだら、お父さんは悲しむだろう」
「そんなー」
「こうなれば、助かる方法は一つしかない」
「どうするの?」
「それはだね。はやく楽しいところへ行って、思いっきり遊ぶんだ。そうすれば病気がなおり、元気になるんだよ」
それを聞いたジミーが言いました。
「ピノッキオ、だまされるんじゃない! 遊んで病気がなおるなんて、うそに決まっている!」
「おっと、お前はあっちに行ってな」
ネコはジミーをつまみ上げると、ピューンと、遠くへ投げ飛ばしました。
そしてピノッキオの手を引っ張ると、
「さあ坊主、兄貴の言葉を聞いただろう。はやく元気になって、お父さんを喜ばせてやろうぜ」
と、いって、ピノッキオを港(みなと)へつれて行きました。