「あの、どこへ行くの?」
ピノッキオがたずねると、一人の男の子がこたえました。
「島の遊園地(ゆうえんち)さ。そこは子どもの天国なんだ。思いきり遊ぼう」
ボーッ。
船が汽笛(きてき)をならして、海をすべり出しました。
ジミーは船の甲板(かんぱん)にピノッキオの姿があるのを見ると、急いで木の板につかまって、船をおいかけました。
「待っていろよ、ピノッキオ。必ず助けてやるからな!」
船はやがて、島の遊園地につきました。
「わーい、着いた、着いた」
子どもたちは先をあらそって、船をおりました。
観覧車に、ジェットコースターに、メリーゴーランドに、ゲームに、ダンスホールと、ここには何でもあります。
どの乗り物もただで乗り放題、おまけにジュースやポップコーン、アイスクリーム、キャンディなんかのお菓子も、食べ放題なのです。
「あははははっ、楽しいなー!」
ピノッキオもいつのまにか、星の女神との約束やジミーのこと、そして、大好きなお父さんのこともわすれて遊んでいました。
でもそうしているうちに、ピノッキオは、まわりの子供たちが次々とロバになっていくことに気がついたのです。
いいえ、まわりの子どもたちばかりではありません、ピノッキオの耳もロバの耳になり、おしりからは、しっぽがはえてきたのです。
「どうしよう!」
ピノッキオがさけんだとき、追いかけてきたジミーがようやくたどりつきました。
「ピノッキオ! すぐ海に飛びこんで逃げるんだ! ここは悪い大人たちが、ロバになった子どもたちを売りとばすところなんだ。君は一生、ロバのまま働きたいかい」
「そんなのいやだ!」
ピノッキオは海に飛び込むと、ジミーといっしょに板につかまって、やっとのことで港に帰りました。
「いいかい、ピノッキオ。わたしも一緒にゼペットさんにあやまってあげるから、ちゃんと、『ごめんなさい』って、言うんだよ」
「うん。ありがとう、ジミー」
さて、ようやくピノッキオとジミーが家に帰ってきたのですが、家の中にはゼペットじいさんがいません。
かわりに、ドアに張り紙がしてありました。
《大切なピノッキオがもどらないので、探しに行きます》
ピノッキオとジミーは家で待ち続けましたが、いつまで待っても、ゼペットじいさんはもどって来ませんでした。
そしてピノッキオとジミーは、悪い知らせを耳にしたのです。
それはゼペットじいさんが、海で大クジラに飲まれてしまったというのです。
「大変だ! お父さんを助けなきゃ!」
さっそく二人は海へ行き、そして大クジラをさがしました。
しかし二人が大クジラを見つけたとき、大クジラは大きな口を開けて、魚と一緒に、ピノッキオとジミーを飲み込んでしまったのです。
大クジラに飲み込まれた二人は、大クジラの口からおなかの中へと泳いで行きました。
すると、大クジラのおなかの中で、ゼペットじいさんがションボリと小舟に乗っていたのです。
「お父さん!」
「おおっ、ピノッキオ! 夢じゃないだろうな、ああ、こっちへおいで。よしよし、お前さえいてくれれば、クジラの中だろうとかまいはしないよ」
ゼペットじいさんはピノッキオをしっかりだきしめて、何度もキスをしました。
「ぼくも会えてうれしいよ。でも、クジラの中でもいいだなんてだめだよ。お父さん、家に帰ろう」
「だが、どうやって?」
ピノッキオは、ゼペットじいさんに言いました。
「舟の中の物を燃やして、煙(けむり)で大クジラのおなかの中をいっぱいにするんだよ! そうすれば、大クジラも苦しくなって、口を開けるに決まっているよ」
「そうか、その手があったか」