ガリバーは海が好きで、船に乗り込んではあちらこちらと旅を続けています。
ところがある時、はげしいあらしに巻き込まれて船は沈んでしまいました。
さて、どれくらいたったのでしょう。
海に投げ出されたガリバーがふと気がつくと、体をなわでしばられて地面に寝かさせていました。
あたりを見回すと、何と数え切れないほどの小人たちが集まっているのです。
「何と、知らないうちに、小人の国へ流れついたというわけか」
小人たちはガリバーをろう屋へ運ぶと、逃げ出せないようくさりでグルグルまきにしばりあげてしまいました。
それから何日かたったある日、小人の王さまがガリバーを見にやって来ました。
「王さま!」
ガリバーは、王さまに言いました。
「暴れたりはしませんから、どうか、くさりをはずしてください」
「・・・ふむ。体は大きいが、お前は悪者(わるもの)ではなさそうだ。のぞみをかなえてやるとしょう」
「ありがとうございます」
喜んだガリバーは、町の見物(けんぶつ)に出かけました。
小人の町の建物(たてもの)はとても小さいものばかりで、ガリバーは建物や人をふみつぶさないよう下ばかり向いています。
さて、そんなある晩、お城で火事がおこりました。
「これは大変。・・・そうだ」
ふと思いついたガリバーは自分のボウシで池の水をすくうと、お城の上へバシャンとかけました。
「すごい、あっという間に火を消してしまったぞ」
ガリバーの人気は、ますます高まるばかりです。
そこへ、知らせが届きました。
海の向こうの小人たちが、こちらの国へ攻め込んで来るというのです。
ガリバーが持っていた望遠鏡(ぼうえんきょう)でのぞいてみると、海の上には敵の国の小人の乗った船がギッシリです。
「よし、わたしまかせてください」
ガリバーは、つり針のようなものをたくさん作ると、それを持って海ヘ入っていきました。
「わあ、大男だあ!」
ビックリした敵の国の小人たちは、ビュンビュンと矢を飛ばしてきますが、
「なんのこれしき。さあ、つかまえてやるぞ」
ガリバーはつり針を船の一つ一つに引っかけると、全部まとめて浜辺へ引っぱりあげてしまいました。
それを見た敵の国の王さまは、
「まいりました。二度と攻め込んだりはしませんから、許してください」
と、あやまってきたのです。
小人たちは喜んで、ガリバーをほめたたえました。
「ばんざい、ばんざい。ガリバー、ばんざい」
ところがまた、困った事がおこりました。
ある日、ガリバーと仲の良い小人たちが、ガリバーのところへ走ってきたのです。
「大変です。王さまと大臣(だいじん)が、ガリバーさんを殺す相談(そうだん)をしています。このままだと、ガリバーさんが王さまになるかもしれないからって」
「それは大変。でも、どうすればいいのだろう?」
「大丈夫です。いっしょに浜まで来てください」
見ると浜辺の岩のかげに、一そうの大きなボートがかくしてありました。
「これに乗って、あなたの国へお帰りなさい。無事に帰れるよう、みんなでおいのりしていますから」
「ありがとう。みんなの事は忘れないよ」
こうしてガリバーは、無事にふるさとの家へ戻ることが出来たのです。